2025.03.21

CO2レーザーとは?原理・特徴・用途をわかりやすく解説!

CO2レーザーとは?原理・特徴・用途をわかりやすく解説!

CO2(炭酸ガス)レーザーとは?

CO2レーザーは、気体レーザーの一種で、CO2(炭酸ガス)を媒質として光を増幅するタイプのレーザーです。このレーザーでは主に10.6μmと9.6μmという2つの波長を中心に、9.2〜10.8μmの範囲で赤外光を発生させます。気体レーザーの特徴として、大きな出力が得られる点が挙げられますが、これは共振器の構造を大きくできるからこそ実現できるメリットです。

一般的に気体レーザーはエネルギー効率があまり良くないと言われることがありますが、CO2レーザーはその中でも比較的効率が良いことで知られています。このページをご覧いただいている方の中には、「CO2レーザーの具体的な特徴が知りたい」「他のレーザーと何が違うのか気になる」「購入する際の参考情報を探している」など、さまざまな関心をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、CO2レーザーの波長や特徴、さまざまな用途はもちろん、その構造や発振の仕組みまで詳しくご紹介します。皆さんの疑問を解消し、CO2レーザーについて理解を深めるお手伝いができれば幸いです。

CO2(炭酸ガス)レーザーの特徴

CO2(炭酸ガス)レーザーには、「波長」と「出力」に特徴があります。

CO2(炭酸ガス)レーザの波長

CO2レーザーの波長は、主に10.6μmと9.6μmの2種類で、9.2μmから10.8μmまでの広い範囲にわたる長波長のレーザーです。この波長は、よく使われるレーザーの基本波長である1064nmと比べると約10倍もの長さになります。こうした特長から、CO2レーザーは最も長い波長帯を持つレーザーのひとつとして知られています。

この長い波長のおかげで、CO2レーザーは材料にしっかりと熱を加えながら加工ができるのが強みです。金属はもちろん、木材、ゴム、さらにはガラスといった幅広い素材に対応できるのが魅力です。また、透明な素材にも効果を発揮できるので、さまざまな分野での応用が期待されています。

CO2(炭酸ガス)レーザーの出力

CO2レーザーの出力は、用途に合わせてさまざまなレベルが用意されています。連続波出力では、ミリワット(mW)単位の小さな出力から、百キロワット(kW)単位の高出力まで幅広く対応可能です。さらに、Qスイッチ技術を使うことで、ギガワット単位という非常に高いピーク出力も実現できるため、高速での切断や型彫りが求められるシーンでしっかり力を発揮します。

加工の目的に応じて、どのくらいの出力を使うかを選ぶこともとても大切です。特に金属加工では、金属の反射率やビーム径が仕上がりに大きく影響します。たとえば、ビーム径が100μm以下の細いスポットなら、ワット(W)単位の出力でもきれいに刻印ができますが、ビームが太くなると、キロワット(kW)クラスの出力でも加工が難しくなる場合があります。こうしたポイントを押さえて出力を選ぶことで、より効果的な加工が実現できます。

CO2(炭酸ガス)レーザーの仕様用途(アプリケーション)

CO2(炭酸ガス)レーザーは、主に医療や美容、そして製造業において多くのアプリケーションが存在します。

CO2レーザーを活用したマイクロ流体デバイス製造

アクリル樹脂(PMMA)は、2.8μmから25μmの波長帯の赤外線をよく吸収する特性があり、そのためマイクロ流体デバイスの製造にはCO2レーザーがよく使われています。マイクロ流体デバイスとは、マイクロ流体力学を活用して、流体を移動させたり、混ぜたり、処理や分析を行ったりする装置のことです。この技術は、たとえばインクジェットプリンターなどにも幅広く活用されています。

マイクロ流体デバイスはとても小さく、そのサイズは5µmから100μmほどになることもあります。製造にはアクリル樹脂だけでなく、ガラスやポリマーなどのさまざまな材料が使われています。CO2レーザーを使ったレーザー彫刻技術によって、これらの材料に直接マイクロ流体経路を作ることができるのです。この加工方法は、デバイスを精密に作り上げられるうえに、さまざまな用途に対応できる強みがあり、いま注目されている技術です。

CO2レーザーを用いた測距とLiDAR

CO2レーザーは、大気中での吸収や減衰が少ないという特長を活かして、レーザー距離測定に広く使われています。なかでも代表的なのがLiDAR(Light Detection And Ranging)技術です。これは、対象物にレーザー光を当てて、その反射光をキャッチすることで距離を測る方法です。軍事の分野では「レーザーレンジファインダー」として使われていて、射撃の精度を高める役割を担っています。

LiDARでは、赤外光、近赤外光、可視光、紫外線など、さまざまな波長の光が活用されています。リモートセンシング技術として、遠く離れた場所からでも素早く距離を測れるのが大きな強みです。そのため、地形測量や環境モニタリング、交通管理など、幅広い分野で導入が進んでいます。CO2レーザーを使ったLiDARは、こうしたシーンでの高精度な距離測定を可能にする、欠かせない技術になっています。

CO2レーザーを用いた美容医療

CO2レーザーは美容医療の分野でも活躍していて、肌の若返りやしわの改善、ニキビ跡の治療などに使われています。このレーザーは生体組織への吸収率が高く、特に水分をたっぷり含んだ組織にしっかり作用するのが特長です。レーザーを照射すると、皮膚の上層が蒸発し、それによってコラーゲンの再生が促されます。その結果、肌の質感やトーンが整い、シミや色素沈着の改善にもつながります。

また、CO2レーザーは施術の精度が高く、周りの健康な組織にはほとんどダメージを与えません。さらに、術後の回復も比較的スムーズなので、患者さんの負担を抑えながら治療できるのが大きなメリットです。

CO2(炭酸ガス)レーザーの構造と発振原理

CO2レーザーは、炭酸ガスを媒質に使った気体レーザーで、その発振の仕組みは「誘導放出」という現象に基づいています。誘導放出とは、エネルギーが高まった状態の分子がエネルギーを放ちながら、より低いエネルギー状態に戻ることで光が生み出される現象です。この動きが繰り返されることで、レーザー光としてのエネルギーが作り出されます。

炭酸ガスにエネルギーを加えると、窒素と二酸化炭素の分子がぶつかり合い、共鳴励起状態がつくられます。ここでエネルギーが交換されることで、二酸化炭素分子の振動準位が上がり、反転分布という特別な状態が生まれます。この状態では、高いエネルギー状態にある分子が多くなり、誘導放出が次々と起こることでレーザー光が発生します。

さらに、電子の衝突によって反転分布の形成が後押しされることで、レーザーの発振がより安定します。こうして、CO2レーザーはその独自の構造と発振メカニズムによって、安定したレーザー光を生み出しているのです。

CO2(炭酸ガス)レーザー加工機でできること

CO2レーザー加工機は、主に「切る加工」と「彫る加工」の2つの加工方法で幅広い用途に活用されています。

レーザーカット

レーザーカットは、CO2レーザーなどのレーザー光線を使って材料を切る技術です。高い精度で切断できるのが特長で、複雑な形状もきれいに仕上げることができます。切断面がとてもなめらかなので、あとからの仕上げ作業がほとんどいらないのも、従来の加工方法とは大きく違うポイントです。また、金属や木材、プラスチックなど、さまざまな素材に対応できるのも魅力です。

レーザーカットは、単なる切断だけでなく、穴あけや特定の形状に沿ったカット、さらに「ハーフカット」と呼ばれる加工方法にも使われます。このハーフカットでは、表面をカットしつつ内部はつながったままにできるので、パッケージデザインやステッカーの製作にもよく使われています。こうした特長から、レーザーカットはさまざまな産業や用途で欠かせない技術となっています。

レーザー彫刻

CO2レーザー彫刻は、さまざまな素材に対応できるレーザー加工技術のひとつです。レーザー光を使って、素材の表面に細かいデザインや文字を彫ったり、マーキングを施したりすることができます。仕組みとしては、レーザーを当てて熱を加え、その熱で素材の表面を剥がすことで彫刻が完成します。

これにより、木材やアクリル、皮革、金属など、幅広い素材に美しい仕上がりが得られます。特にデザイン性が重視される製品にはぴったりで、無料相談で導入検討ができるのもうれしいポイントです。また、レーザー彫刻機を選ぶときには、どの素材に適しているかをしっかり理解しておくことが大切です。

ただし、すべての素材に万能というわけではなく、特定の材料では加工が難しいことや、加工スピードに左右される部分もあるため、使う場面に合わせた選び方が必要になります。

CO2(炭酸ガス)レーザー加工機の仕組み・構造

CO2レーザー加工機は、主に光共振器、炭酸ガス、および放電・冷却装置の三つの要素から成り立っています。

光共振器

光共振器とは、光が何度も行き来できるように鏡を配置した装置のことです。この仕組みによって、光は共振器の中で繰り返し反射され、媒質にエネルギーを与えて誘導放出を促進します。CO2レーザーでは、低圧の炭酸ガスが入った放電管が中心となり、光共振器が構成されています。

共振器の一方には光をほぼ100%反射する全反射鏡があり、これが光を内部に閉じ込めて強める役割を果たしています。もう片方には反射率35〜60%ほどの半反射鏡が取り付けられていて、ここから光の一部が外に取り出されるしくみです。こうした構造によって、CO2レーザーは高出力の光を作り出すことができます。

さらに、放電管の内部には必要な電極が側面や両端に配置されていて、炭酸ガスが励起されることで光が生まれます。この構造が、CO2レーザーの効率的な動作を支える大きなポイントです。光共振器の設計や配置はレーザーの性能や使い道にしっかり影響するため、とても重要な要素となっています。

炭酸ガス

CO2レーザーの媒質として使われる炭酸ガスは、主に二酸化炭素(CO2)が約10〜20%、窒素(N2)も同じく約10〜20%の割合で含まれています。さらに、水素(H2)またはキセノン(Xe)がそれぞれ2〜5%ほど加えられ、残りはヘリウム(He)が占めています。このガスの混合比率はメーカーによって少しずつ異なり、用途や目的に合わせて最適に調整されるのが一般的です。

炭酸ガスの特性を活かして、CO2レーザーは優れた出力性能を発揮し、さまざまな加工に幅広く使われています。特に、CO2レーザーの波長は高い吸収性を持つ材料にしっかり作用するため、いろいろな応用が可能になっています。

放電・冷却装置

CO2レーザーの放電・冷却装置は、レーザー加工機がしっかりと性能を発揮し続けるために欠かせない重要なパーツです。大出力のCO2レーザーでは、光共振器の中で高周波電流による放電が行われ、強力なエネルギーが発生します。このとき、放電管の中にある混合ガスはだんだん劣化してしまうので、定期的にしっかりと冷却する必要があります。冷却装置は、熱を持ったヘリウム原子を効率よく冷やす役割を担っています。

冷却方式は、大きく分けて空冷と水冷の2つがあります。空冷は、ガラス容器の側面を通じて冷やす方法で、比較的出力が小さいCO2レーザーでよく使われています。一方で、大出力のCO2レーザーでは放電管にガスを封入しない構造のため、外部の冷却装置を使ってガスを循環させながら冷やす必要があります。こうした冷却システムのおかげで、CO2レーザーは安定した出力を保ちながら、長時間の使用が可能になっているのです。

まとめ

CO2レーザーに関する解説はこれでひと通りご紹介となります。今回の記事では、CO2レーザーの特徴や幅広い応用例、安全面で気をつけるポイント、さらにその構造や発振の原理まで、詳しくご説明しました。

西進商事では、こうしたレーザーの可能性を最大限に引き出す装置の設計・製造を行っています。より詳しい情報や関連する記事については、ぜひ以下のページもご覧ください。

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西進商事 コラム編集部;

西進商事コラム編集部です。専門商社かつメーカーとしての長い歴史を持ち、精密装置やレーザー加工の最前線を発信。分析標準物質の活用も含め、さまざまなコラム発信をします。