5分で分かる標準物質
はじめに
標準物質とは、さまざまな物質や素材中の「成分」を分析する際に必要な物質のことを指します。例えば「川のに含まれている有害元素の濃度を測りたい!」となれば、その元素が一定量含まれた標準物質を使います。
成分分析ができる装置の中に標準物質を入れ測定の基準となる検量線というものを立てることで、その後川の水を装置に投入すると検量線を元に川の水の成分濃度を割り出すことができます。(一例)
標準物質は測定の指標となることから、標準物質は分析の「ものさし」だと例えられることもあります。1cmの長さのものを測ろうとした時、1cmがきちんと定義されたものさし(標準物質)を使うことで、ただしい結果を得られるというものです。
Q&A(お客様からのよくある質問と回答)
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標準物質って、どんなものをいうのですか?
標準物質は分析を行う際に用いる基準物質のことです。例えば、滴定に用いる二クロム酸カリウムなどの純物質(純物質標準)や土壌中の化学成分の分析に用いる土壌標準物質(組成標準物質)などたくさんの種類があります。
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どのような種類があるのですか?
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なぜ分析するのに標準物質が必要なのですか?
重さを量るには分銅、長さを測るにはものさしが必要です。分析成分の濃度を測定するための基準が「標準物質」です。同じ物質中のある成分を分析する場合、世界中のどこで、だれが、いつ分析しても、同じ分析結果が得られるような共通の基準物質である「標準物質」が必要なのです。
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標準物質には「標準物質」と、「認証標準物質」と呼ばれるものがあるようですが、どこが違うのですか?
「標準物質」は「RM / Reference Material」、 「認証標準物質」は「CRM / Certified Reference Material」と呼ばれます。
そして、RM及び CRM は JIS Q 0035によって以下のように定義されています。RM: 一つ以上の指定された特性について、十分均質かつ安定であり、測定プロセスでの使用目的に適するように作製された物質。
CRM: 一つ以上の指定された特性について、計量学的に妥当な手順によって値付けされ、指定された特性の値及びその不確かさ、並びに計量学的トレーサビリティを記述した認証書が付いている標準物質。 -
標準物質に関係する JIS 規格にはどんなものがあるのですか?
「標準物質」についての規定としては、下記のようなJIS があり、( )内に示す ISO の翻訳規格( ISOの技術的内容及び構成を変更しないで JIS としたもの)です。
(1) JIS Q 0030 「標準物質に関連して用いられる用語及び定義」( ISO Guide 30 )
(2) JIS Q 0031 「標準物質ー認証書・ラベル及び附属文書の内容」 ( ISO Guide 31 )
(3) JIS Q 0033 「標準物質―標準物質の適正な使い方」( ISO Guide 33 )
(4) JIS Q 17034 「標準物質生産者の能力に関する一般要求事項」( ISO 17034 )
(5) JIS Q 0035 「標準物質ー値付け並びに均質性及び安定性の評価に関する手引」( ISO Guide 35 ) -
「標準物質」はどういう時に使うものなのですか?
分析を実施するに当たっていろいろな時に使いますが、主として次のような場合に使います。
(1)分析装置や計測機器の校正
(2)物質や材料への値付け
(3)分析方法や計測方法の評価
(4)分析精度管理
(5)分析技術者の技術能力の評価 -
「標準物質」を「分析装置や計測機器の校正」に用いる場合の具体的な使い方について教えてください?
① 分析装置や計測機器などが正確な指示値を示すように標準物質を用いて調整します。
② 濃度水準が段階的に異なる標準物質を用いて検量線を作成することにより、分析機器が示す物理量単位の指示値を濃度などに変換します。
③ これらの操作には一般に標準液や高純度化学物質からなる“ 純物質系標準物質 ”が用いられます。
④ “ 組成標準物質 ”が用いられる例: 金属中の炭素・硫黄分析装置の校正では、検出器の校正は CO2, SO2 標準ガスを用いて調整しますが、実際の分析装置の校正には炭素・硫黄定量用金属認証標準物質(組成標準物質)が用いられます。 -
「標準物質」を「物質や材料への値付け」に用いる場合の具体的な使い方について教えてください?
① 標準物質を用いて作成した検量線によって、物理量単位の指示値を試料中の各成分の含有率に変換します。
② 例えば、容量分析における規定液の標定の場合,純度が確定された容量分析用標準物質(CRM)(ないしは高純度化学物質)を基準にして被検液の濃度を決定します。
③ 例えば、 ICP発光分光分析法では,認証混合標準液(CRM)で作成した検量線を用いて被検試料中の各成分の含有率を求めます。 -
「標準物質」を「分析方法や計測方法の評価」に用いることについて具体的に説明してほしい。
① 使用する分析・計測方法が信頼性のある方法か否かを評価する場合に標準物質を用いて確認します。
② 既存の分析方法を改良した際や新たな分析方法を開発した際に、それらの分析方法が正しい値を出すことができるかどうかの 妥当性確認(バリデ-ション) に用います。通常、この目的には組成認証標準物質が使用されます。 -
「標準物質」を「分析精度管理」に用いることについてもう少し具体的に説明してほしい。
① 認証標準物質を用いた精度管理として、分析値の平均値と認証値の差の絶対値を要求真度と比較することによる、真度の管理を行うことができます。以下に実施例を示します。
② 実際試料を分析する際に、一定頻度で、所定濃度の標準液を分析し、検量線の変動を確認して精度管理をする。
③ 複数の測定試料分析において、一定周期ごとに標準物質を入れて分析し、分析値の変動を確認して精度管理をする(X-R管理)。
④ 実際試料と併行して標準物質を分析し、標準物質の認証値と比較して精度管理をする(分析値の妥当性確認)。
⑤ 認証標準物質は、分析・計測における真度(正確さ)の評価あるいは国際単位系(SI)へのトレ-サビリティの立証には不可欠なものです。 -
「標準物質」を「分析技術者の技術能力の評価」に用いる具体的なやり方について教えてください?
① 分析技術者が信頼性の高いデ-タを出せる技術的能力を有するか確認する一つの方法として標準物質の分析を取り入れる。
② 日常の分析時に実際試料と同じように標準物質を分析し、分析結果が標準物質認証値の不確かさの範囲内に入るかなどで技術力の評価を行います。
③ 信頼できる結果を得た者は、当該分析方法を分析することができる資格を与えるなど資格試験に活用している場合もある。通常、この目的には実際試料に類似した組成の組成標準物質が使用されます。
※注
ここでは主として「化学標準物質」を対象とします。
「化学標準物質」とは、高純度物質又は組成標準物質。天然又は分析種が添加されたもので、一つ以上の化学特性値又は物理化学特性値に関して特性値決定が行われたもの。物理標準物質、工学用標準物質は対象としません。標準物質を使った分析の腕比べがおこなる分析技能試験については【Q&A】技能試験とは何ですか?こちらの記事を参考にしてください。
今後、みなさまのお声を参考に項目を増やしていきますのでご期待ください!