2025.09.19

PLCは時代遅れ?ラダー言語の今後と未来の必要性を解説

PLCは時代遅れ?ラダー言語の今後と未来の必要性を解説

PLCは時代遅れ?ラダー言語の今後と未来の必要性を解説

PLCとそこで使われるラダー言語は「時代遅れ」という意見が見られますが、実際の製造現場では今なお不可欠な技術です。
ファクトリーオートメーションの根幹を担うPLCは、新しい技術を取り込みながら進化を続けています。
この記事では、PLCが時代遅れと言われる理由を整理しつつ、その必要性や技術者の需要、そしてラダー言語の今後を含む将来性について、具体的な根拠をもとに解説します。

PLCが「時代遅れ」と言われてしまう3つの理由

PLCが「時代遅れ」と見なされる背景には、いくつかの要因が存在します。
見た目が古く感じられるハードウェアや、現代的なプログラミング言語と比較した際のラダー言語の特殊性が、古い技術という印象を与えています。
また、熟練技術者の高齢化といった課題も、技術そのものの将来性を不安視させ、「PLCはなくなるのではないか」という懸念につながっています。

製造業の現場でPLCが今も不可欠な4つの根拠

「時代遅れ」との評価とは対照的に、製造業の現場におけるPLCの需要は依然として高い水準を維持しています。
これは、PLCが持つ他の制御機器では代替しがたいメリットに起因するものです。
FA市場の拡大や既存設備の維持に不可欠である点、過酷な環境下での高い信頼性、そしてIoT化といった新しい技術トレンドへの対応力が、PLCが今も選ばれ続ける根拠となっています。

理由1:FA市場の拡大に伴いPLCの需要も増加している

世界的なファクトリーオートメーション(FA)市場の拡大は、PLC需要を押し上げる大きな要因です。
各種調査レポートが示すように、新興国での人件費高騰や先進国での労働力不足を背景に、工場の自動化・省人化への投資は増加トレンドにあります。
この自動化システムの中心的な役割を担うのがPLCであり、市場規模の成長と比例してその需要も高まっています。
特に、スマートファクトリー化の進展に伴い、より高機能なPLCの導入が進んでおり、今後もこの傾向は継続すると見込まれています。

理由2:既存設備の更新やメンテナンスで必須の知識

日本の製造現場では、長年にわたり稼働を続ける既存設備が数多く存在します。
これらの設備の多くは、大手メーカー製のPLCによって制御されており、設備の安定稼働を支えるためにはPLCの知識が欠かせません。
設備の寿命が尽きるまでの定期的なメンテナンスや、突発的な故障に対応する保全業務において、ラダープログラムの読解や修正スキルは必須です。
また、設備を更新する際にも、既存の制御システムを理解した上で新しいシステムへ移行させる必要があり、PLC技術者の需要が途絶えることはありません。

理由3:過酷な環境でも安定稼働する高い信頼性

工場の生産ラインは、温度や湿度の変化、振動、電気的なノイズなど、一般的な電子機器にとっては過酷な環境です。
PLCは、こうした厳しい条件下でも24時間365日、長期間にわたって安定して稼働するように設計された専用コントローラです。
この極めて高い信頼性と堅牢性が、生産を一時も止められない製造現場で高く評価されています。
PCベースの制御システムと比較して、OSのアップデートやウイルス感染のリスクが低い点も、安定稼働を最優先する現場でPLCが選ばれ続ける大きな理由です。

理由4:IoT化に対応する最新モデルも登場している

PLCは古い技術というイメージに反して、現代の技術トレンドに対応する進化を続けています。
近年のPLCは、Ethernetポートを標準で備え、上位の生産管理システム(MES)やクラウドサービスとの通信が容易になっています。
これにより、現場の稼働データをリアルタイムで収集・分析し、生産性の向上や予知保全に活用する工場のIoT化において、PLCは重要な役割を担います。
実際に、PLCから収集したデータを活用して製造プロセスの改善を実現した事例も増えており、PLCはスマートファクトリーを支えるキーデバイスの一つとなっています。

PLCエンジニア(ラダー言語)の需要と将来性

PLC本体の需要が安定していることに加え、それを扱う技術者の将来も有望視されています。
特に日本では、長年PLC技術を支えてきたベテラン層の引退が進む一方で、若手の担い手が不足している状況です。
この需給ギャップが、PLCエンジニアの市場価値を高める要因となっています。
今後、FA化やスマートファクトリー化がさらに進展することから、PLCエンジニアの需要は継続的に見込まれます。

扱える技術者の減少で市場価値が高まっている

現在、多くの工場でPLCのメンテナンスや改修を担っているのは、経験豊富なベテラン技術者です。
しかし、これらの技術者が次々と定年退職を迎える一方で、若手への技術継承は十分に進んでいません。
IT業界の華やかなイメージに惹かれる若者が多い中、PLCのような制御技術を志す人材は限られています。
その結果、PLCを扱える技術者の数は減少し、供給に対して需要が上回る状態が続いています。
このため、既存のラダープログラムを解析し、トラブル対応ができる技術者の市場価値は年々高まる傾向にあります。

習得難易度の高さから挫折者が多く希少性が高い

ラダー言語は電気回路図をベースにしており、一見すると直感的に理解できそうですが、シーケンス制御特有の考え方や自己保持回路、タイマー、カウンターといった概念を正しく理解するのは容易ではありません。
特に、実機を動かしながらデバッグを行うスキルは、独学だけで身につけるのが難しい部分です。
Web系のプログラミング言語と比べて学習教材や情報が限られていることも、最初のハードルを高くしています。
この習得難易度の高さから途中で挫折する学習者も多く、結果としてスキルを習得した技術者の希少価値を高めています。

工作機械やFA設備の受注増でプログラマーが不足している

半導体製造装置や電気自動車(EV)関連設備、自動倉庫など、近年のFA設備や工作機械の需要は世界的に拡大しています。
これらの高度な設備や機械を正確に動かすためには、PLCによる精密な制御プログラムが不可欠です。
設備の受注が増えれば、その分だけPLCプログラマーが必要になりますが、技術者の育成が追いついていないため、業界全体で深刻な人材不足に陥っています。
特に、複雑な動作をラダー言語で効率的にプログラミングできるスキルを持つエンジニアは、多くの企業から強く求められる存在です。

PLCとラダー言語の未来はどうなる?進化の方向性

PLCとラダー言語は、役割を終えるのではなく、現代の技術トレンドと融合する形で進化を続けます。
基本的なシーケンス制御の役割は維持しつつ、IT技術との親和性を高めることが今後の大きな方向性です。
具体的には、他のプログラミング言語との連携、SCADAやクラウドといった上位システムとのシームレスな通信、そしてエッジコンピューティング領域での役割拡大などが進むと見られています。

PythonやC++など他言語との連携が進む

今後のPLCは、ラダー言語だけで全ての処理を完結させるのではなく、他のプログラミング言語との連携がより一層進みます。
例えば、高速なシーケンス制御はラダー言語が担い、AIによる画像認識や複雑なデータ分析、通信処理といった高度な機能は、PythonやC++で記述されたプログラムが実行する、といった役割分担が一般的になります。
すでに一部のメーカーでは、同一のハードウェア上で複数の言語を共存させることが可能です。
これにより、それぞれの言語の長所を活かした、より高度で柔軟なシステム構築が実現します。

SCADAなど上位システムとの直接通信が容易になる

工場のDX化において、生産現場のデータを経営情報と結びつけることが重要になります。
PLCは、生産ラインの稼働状況や品質データを収集する最も現場に近いデバイスです。
これまでは、PLCと生産管理システム(MES)や監視制御システム(SCADA)を連携させるには、専用の機器や複雑な設定が必要でした。
しかし、近年はOPCUAなどのオープンな通信規格を標準でサポートするPLCが増え、上位システムとのデータ連携が格段に容易になっています。
これにより、PLCはスマートファクトリーの情報基盤を支える重要な役割を担います。

エッジコンピューティング領域での役割が拡大する

全てのデータをクラウドに送信して処理するのではなく、生産現場(エッジ)で一次処理を行うエッジコンピューティングが注目されています。
PLCは、センサーからの情報をリアルタイムで処理する能力に長けているため、このエッジデバイスとして最適な存在です。
AI機能を内蔵したPLCも登場しており、現場で収集したデータを用いて異常検知や予知保全の分析をPLC単体で行うことが可能になりつつあります。
これにより、クラウドへの通信負荷を軽減しつつ、より高速なフィードバック制御が実現できるようになります。

まとめ

「PLCは時代遅れ」という見方もありますが、FA市場の拡大や既存設備の維持に不可欠であり、その需要は安定しています。
また、PLC自体もIoTやAIといった新しい技術を取り込み、スマートファクトリーの中核を担うデバイスとして進化を続けています。
一方で、PLCを扱える技術者は減少傾向にあり、その希少価値は高まっています。
今後は、従来のラダー言語のスキルに加え、Pythonなどの他言語や、SCADAのような上位システムとの連携知識を持つエンジニアが、さらに重要な役割を担っていくことになります。

西進商事コラム編集部

西進商事コラム編集部です。専門商社かつメーカーとしての長い歴史を持ち、精密装置やレーザー加工の最前線を発信。分析標準物質の活用も含め、さまざまなコラム発信をします。

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