ファクトリーオートメーション(FA)とは?わかりやすく解説

ファクトリーオートメーション(FA)とは?わかりやすく解説

ファクトリーオートメーション(FA)とは?

ファクトリーオートメーション(FA)とは、工場の生産工程を自動化し、これまで人が行っていた作業をロボットに任せることを意味します。これによって、加工や組立、マテリアルハンドリング、管理といったさまざまな分野で効率化が進められます。

今のFAでは、ITシステムの活用が欠かせません。製造システムや基幹システム、さらには社外の関係者を管理するシステムなどを組み合わせることで、生産性の向上や品質の安定が期待できます。

ファクトリーオートメーションの歴史

年代 主な出来事 ポイント
1950年代後半エレクトロニクス技術革新 製鉄・自動車産業で連続鋳造・溶接装置導入大量生産の基盤づくり
1960年代後半 集積回路(IC)登場 GM社がロボットアーム導入過酷な作業をロボット化 FAの実用化が始まる
1970年代後半数値制御(NC)工作機械が普及 日本製NC工作機械が世界で評価日本の製造業がオートメ化 国際競争力が向上
1990年代インターネット普及 CAD / CAM / CAE / PLMが広がる設計と製造の統合オートメ化
2006年〜ドイツでインダストリー4.0開始 IoT導入で機械がネットワーク化スマートファクトリーの実現 社内外で生産効率化
現在 FA技術がさらに進化中効率化・品質向上・競争力強化 製造業の要に

ファクトリーオートメーション(FA)の発展は、20世紀後半から本格的に始まりました。1950年代後半、エレクトロニクス分野で技術革新が進むなか、製鉄業や自動車産業では連続鋳造や溶接装置が導入され、大量生産が実現。これがFA発展の土台となりました。

1960年代後半になると、集積回路(IC)が工作機械に組み込まれはじめ、いよいよ産業用ロボットが実用化されます。アメリカのGM社がロボットアームを生産ラインに導入し、材料の運搬や溶接、塗装、組立といった過酷な作業をロボットに任せたことは、FAの歴史に残る大きな一歩です。

さらに1970年代後半には、数値制御(NC)工作機械が広まり、日本製のNC工作機械が世界的に高く評価されるようになりました。このころから日本の製造業では加工工程の自動化が進み、国際的な競争力をぐっと高めていきます。

1990年代に入ると、インターネットの普及と計算機の低価格化が進み、CADやCAM、CAE、PLMといったソフトウェアが一気に広がります。これにより、製造現場だけでなく設計部門とも連携した統合的なオートメーションが実現し、「ファクトリー」の考え方そのものが大きく広がりました。

さらに、2006年にドイツで始まったインダストリー4.0の動きが、FAをさらに加速させます。IoTが導入されたことで機械同士がインターネットを通じてつながり、リアルタイムでデータを処理できる仕組みが整いました。これにより、社内の設備だけでなく社外の工場とも連携しながら、生産の効率化がぐっと進んだのです。

このように、ファクトリーオートメーションは日本をはじめとする世界の製造業とともに歩み、進化を続けてきた技術です。

近年のファクトリーオートメーション加速の背景

近年ファクトリーオートメーションの必要性が叫ばれ、より一層加速している背景には、グローバル競争意識と、労働人口減少が関わっています。

グローバル競争意識の高まり:人件費削減だけでは競争に勝てない

製造業におけるグローバル競争の意識は、ここ最近ますます強まってきています。

特にアジア市場では、人件費の上昇や新興メーカーの技術力向上などにより、国際的な競争環境が大きく変わりつつあります。これまでは低コストを求めて海外に生産拠点を移す企業が多かったものの、最近ではそのメリットも薄れはじめています。たとえば、中国の製造業では人件費が上昇し、これまでのようなコスト優位性が下がってきました。

こうした流れのなかで、企業は単なるコスト削減だけでなく、製品の品質や生産効率にも目を向けるようになっています。量から質へのシフトが求められる今、ファクトリーオートメーションの導入がさらに加速しています。具体的には、ほぼ全自動の生産ラインを実現したり、センサーやロボット技術を取り入れて生産プロセスをより効率的に最適化する取り組みが進められています。

労働人口減少への対策

少子高齢化が進む中で、日本の労働人口は大きく減少しています。予測によると、2030年には16〜64歳の働き手が約1,400万人も減ると言われています。この深刻な課題に対応するためには、省人化を進めるファクトリーオートメーションの導入が欠かせません。

人手に頼った製造プロセスは、これからさらに人手不足の影響を受けやすくなり、従来の方法では立ち行かなくなる可能性があります。だからこそ、効率的な生産システムをしっかりと構築することが急務です。ファクトリーオートメーションは、労働力不足をカバーしつつ、生産の持続可能性を高めるための大きな力となっています。

ファクトリーオートメーション(FA)のメリット

それでは、ファクトリーオートメーション導入が企業にもたらすメリットをご紹介します。

人件費削減

ファクトリーオートメーションの大きなメリットのひとつは、企業にとって人件費の削減ができるという点です。

日本の製造業では、多くの工程で人手が必要とされてきましたが、これがコストアップの要因となっていました。これまで日本企業が中国などのアジア諸国へ生産拠点を移してきたのも、労働コストを抑えるためだったと言えます。

とはいえ、近年では海外でも人件費が上昇しており、海外生産によるコストメリットは以前ほどではなくなってきています。こうした状況の中で注目されているのが、産業用ロボットの活用です。人手に頼らず、効率よく作業をこなせるロボットは、企業が人件費を抑えるための強力な味方となっています。

品質の維持・向上

日本のものづくりは、長年にわたって職人の技術によって支えられてきました。しかし、少子高齢化が進む中で、こうした職人技を次の世代に引き継ぐことがだんだん難しくなってきています。こうした背景から、ロボットを活用した自動化システムへの期待が高まっています。

ロボットは一定の精度で同じ作業を繰り返すことができるため、製品の品質を安定させるのに大きな力を発揮します。人手不足をカバーしながら、しっかりと品質を維持するためにも、ファクトリーオートメーションは今や欠かせない存在となっています。

生産効率の向上

ファクトリーオートメーションは、生産ライン全体の効率をアップさせるためにとても重要な手段です。中でもロボットを導入することで、自動化されたプロセスは人が行う作業よりもスピーディーで、しかも精度の高い作業が可能になります。

その結果、生産スピードが向上し、業務がスムーズに進むことで安定した生産体制が実現できます。また、自動化によって重複していた作業が減ることで、使っているリソースをもっと効率よく活用できるようになるのも大きなメリットです。

ファクトリーオートメーションのデメリット

ファクトリーオートメーションにはメリットが多い一方で、初期投資の大きさや雇用不安がデメリットとして挙げられます。

初期投資費用がかかる

ファクトリーオートメーションを導入する際に、やはり一番気になるのが初期投資費用です。生産ラインを自動化するには、まずシステム導入が不可欠ですが、このプロセスにはかなりのコストがかかります。

まず必要になるのが、ロボット本体とそれを動かすための制御システムです。ロボット導入にかかる費用は、数十万円から数百万円と幅広く、たとえば組み立てライン向けの産業用ロボットだと、シンプルなモデルでもおおよそ150万円程度。もし特殊な機能を備えたロボットであれば、それ以上の価格になることも珍しくありません。

さらに、これらのロボットをしっかり活用するためには、高度なプログラミングや制御の技術が欠かせません。そのため、専門技術者の雇用が必要になり、人件費も初期投資として加わります。技術者の年収はおおよそ400万円〜700万円ほどと言われており、これもなかなかのコストになります。

加えて、導入したロボットや設備を安定して使い続けるには、定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンス契約を結ぶと、年間で数十万円ほどの費用が発生することもあります。

ほかにも、設備同士の連携を考えたシステム設計や、安全対策の費用も必要になります。こうしたことを考えると、ファクトリーオートメーションの初期投資は決して小さな負担ではありません。だからこそ、導入前にしっかりと計画を立てることが、FA導入成功のカギと言えるでしょう。

雇用への懸念

ファクトリーオートメーションは、ロボットや機械で多くの工程を自動化することで業務効率を大きく向上させる一方で、「仕事が奪われるのでは?」という不安の声が広がっているのも事実です。

特に製造業では、これまで人の手で行っていた作業が機械化されることで、求人の減少が予想されます。転職を考えている人にとっては、これが大きな不安材料となっています。たとえば、ある自動車工場では組立ラインに全自動ロボットを導入したことで、従来の作業員が大幅に減ったという例もあります。こうした状況が広がると、「キャリアの選択肢が狭まるのでは?」という声が多く聞かれるのも無理はありません。

とはいえ、ファクトリーオートメーションが進んだからといって、すべての職がなくなるわけではありません。たとえば、ロボットをプログラミングしたりメンテナンスしたりする技術職はむしろ需要が増えています。企業としても、そうした専門人材を育てるために教育制度や研修プログラムの整備が必要になっています。これにより、新しい転職先としての選択肢が生まれるチャンスも広がっているのです。

さらに、FAの導入は工場の効率化だけでなく、安全性の向上や生産品質の安定といったメリットももたらします。こうした新しい価値に関連した職種も生まれており、求められるスキルや役割も変化しています。その変化にしっかりと適応していくことが大切です。

つまり、「仕事が奪われる」という懸念は確かにありますが、その一方で新たな仕事や役割が生まれているのも事実です。企業も働く人も、この変化に柔軟に向き合い、チャンスをつかんでいく姿勢が求められています。

ファクトリーオートメーションを実現するシステム一例

ファクトリーオートメーションを実現するには、自動化に関連する各種システムが欠かせません。いくつかご紹介いたします。

PDM(製品情報管理システム)

PDMとは、Product Data Managementの略で、製品情報管理システムを指します。このシステムは、CADデータやBOMなどの製品や設計に関連する情報を一元的に管理します。

PDMは、設計部門と他の部署との間で情報共有や連携を促進し、生産性の向上を助ける役割を果たしています。これにより、製品開発プロセス全体の効率化が図れます。

PLM(製品ライフサイクル管理)

PLMとはProduct Lifecycle Managementの略で、製品ライフサイクル管理を指します。設計から開発、保守、廃棄、リサイクルに至るまで、製品の全過程を一元管理するシステムです。

この管理手法により、効率的な情報共有が実現し、企業の利益最大化に寄与します。最近では、IoTなどのデジタル技術が注目され、これらを活用してものづくり体制を強化する企業が増加しています。PLMシステムはその中で重要な役割を果たしています。

CAD(コンピュータ支援設計)

CADとはコンピュータ支援設計の略で、設計や図面作成に用いるシステムです。大手メーカーが製品開発を行う際には、機械や部品の設計に欠かせないツールとなっています。

1960年代には航空機メーカーが二次元CADを開発し、以来自動車や機械系の設計で広く利用されるようになりました。今日では、CADは特に3DCADへの進化が進んでおり、設計の効率化や精度向上に寄与しています。

CAM(コンピュータ支援製造)

CAMとはコンピュータ支援製造を指し、製造過程において機械の操作や管理を支援するシステムです。FA(ファクトリーオートメーション)においては、CADで設計されたデータを基に、加工機械へ直接指示を出す役割を果たします。これにより、手作業による誤差を減少させ、効率的な生産が可能となります。また、設計と製造の連携が向上するため、全体の生産性向上に寄与します。

CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)

CAEは、設計や開発において非常に重要なシステムです。コンピュータを用いて製品の性能を事前にシミュレーションし、機能が目的に合っているかを計算します。これにより、従来の試作段階で発生する問題を早期に発見でき、効率的な設計プロセスを実現します。

CADで製図を行う前に数値解析を行うことで、時間とコストの削減が可能です。CAEは製品開発における欠かせないツールとなり、研究者やエンジニアの業務を円滑に進める効果があります。

CAT(コンピュータ支援テスト)

CATはコンピュータ支援テスト(Computer Aided Test)の略で、テスト工程を効率化するためのシステムです。このシステムは、CAEと組み合わせることで、コンピュータ上でテストデータを生成し、自動的にテストを行います。その結果、得られたデータの解析も迅速に実施可能となり、品質向上に寄与します。

まとめ

ファクトリーオートメーション(FA)は、工場の生産工程を自動化し、効率アップを目指す仕組みです。ロボットやIT技術を活用することで、コストを抑えながら品質向上も期待できるのが大きな特徴です。最近では、DXと組み合わせたデータ活用も進み、さらにスマートな工場運営が実現できるようになっています。

もちろん、導入には相応のコストがかかりますし、雇用の面でもしっかり考えるべき課題があります。しかし、労働人口が減少している今、FAはこれからの製造業を支える欠かせない存在となっていくでしょう。

西進商事コラム編集部

西進商事コラム編集部です。専門商社かつメーカーとしての長い歴史を持ち、精密装置やレーザー加工の最前線を発信。分析標準物質の活用も含め、業界をリードする知見を提供します。