
- INDEX目次
目次【非表示】
- 1.ファクトリーオートメーション(FA)とは?
- 2.ファクトリーオートメーションとDXの違い
- 3.ファクトリーオートメーションの歴史
- 4.近年のファクトリーオートメーション加速の背景
- 4-1.グローバル競争意識の高まり
- 4-2.労働人口減少への対策
- 5.ファクトリーオートメーション(FA)のメリット
- 5-1.人件費削減
- 5-2.品質の維持・向上
- 5-3.生産効率の向上
- 6.ファクトリーオートメーションのデメリット
- 6-1.初期投資費用がかかる
- 6-2.雇用への懸念
- 7.ファクトリーオートメーションを実現するシステム一例
- 7-1.PDM(製品情報管理システム)
- 7-2.PLM(製品ライフサイクル管理)
- 7-3.CAD(コンピュータ支援設計)
- 7-4.CAM(コンピュータ支援製造)
- 7-5.CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)
- 7-6.CAT(コンピュータ支援テスト)
- 8.まとめ
ファクトリーオートメーション(FA)とは?
ファクトリーオートメーション(FA)とは、工場の生産工程を自動化し、作業を人間からロボットに置き換えることを指します。これにより、加工や組立、マテリアルハンドリング、管理などの分野での効率化が図られます。
現代のFAでは、ITシステムが不可欠であり、製造システムや基幹システム、社外関係者管理システムなどが利用されます。このようなシステムを活用することで、生産性や品質の向上が期待されます。
ファクトリーオートメーションとDXの違い
ファクトリーオートメーション(FA)とデジタルトランスフォーメーション(DX)は、どちらも産業界で注目されている概念ですが、目的や実施方法には明確な違いがあります。
ファクトリーオートメーションとは、製造業において人間の手作業をロボットや自動化システムに置き換えることを指します。これにより生産工程の効率が向上し、生産コストを削減することが可能になります。日本の自動車産業では、特にロボットによる組立ラインの導入が進んでおり、トヨタやホンダなどの企業がその典型例です。これにより、極めて高い生産性と品質が維持されています。
対して、DXは企業全体のビジネスモデルや業務プロセスそのものをデジタル技術で変革することを目指します。例えば、IoT技術を利用してリアルタイムでデータを収集・分析することで、新たなサービスの創出や業務フローの最適化が図られます。最近の事例としては、製造過程にセンサーを導入し、故障予測やメンテナンスの最適化を行う企業が増えています。
このように、FAは現場の自動化を重視するのに対し、DXは企業文化や業務フロー全体を革新しようとするものです。ファクトリーオートメーションはあくまで製造工程の効率化に特化しているのに対し、DXは企業の持続的成長をサポートするための広範な取り組みです。
今後、FAとDXは相互に補完し合いながら発展していくことが期待されます。特に市場が厳しさを増す中で、より効果的な製造システムの構築は、企業競争力を高める上で欠かせない要素となるでしょう。
ファクトリーオートメーションの歴史
ファクトリーオートメーション(FA)の発展は、20世紀後半から始まりました。1950年代後半にエレクトロニクス分野の技術革新が進む中、製鉄業や自動車産業では連続鋳造や溶接装置が導入され、大量生産が可能となりました。これがファクトリーオートメーションの基礎を築くきっかけとなったのです。
1960年代後半には、集積回路(IC)が工作機械に組み込まれ始め、産業用ロボットが実用化されました。アメリカの自動車メーカー、GM社がロボットアームを導入し、材料の運搬や溶接、塗装、組立といった厳しい物理作業にロボットを活用したことは、FAの歴史的な一歩となりました。
さらに1970年代後半には、数値制御(NC)工作機械が普及し始め、「日本製NC工作機械」が世界で評価されるようになります。この頃から、日本の製造業は加工工程のオートメーション化が進行し、国内外の市場での競争力が高まりました。
1990年代に入ると、インターネットの急速な普及と計算機の低価格化が、CADやCAM、CAE、PLMといったソフトウェアの普及を促します。これにより、製造現場だけでなく設計との統合的なオートメーション化が実現し、「ファクトリー」の概念がさらに拡大しました。
2006年にドイツでスタートしたインダストリー4.0は、IoTの導入によりFAの進化を加速させました。機器同士がインターネットで連携し、リアルタイムでデータを処理できる仕組みが整いました。このトレンドにより、社内のみならず社外の工場とも連携することが可能になり、効率化の面でも大きな影響を及ぼしました。
このように、ファクトリーオートメーションは日本を含む世界の製造業と密接に関連しながら、歴史を歩んできたのです。
近年のファクトリーオートメーション加速の背景
近年ファクトリーオートメーションの必要性が叫ばれ、より一層加速している背景には、グローバル競争意識と、労働人口減少が関わっています。
グローバル競争意識の高まり
製造業におけるグローバル競争意識の高まりは、近年ますます顕著になっています。
特にアジア市場における人件費の上昇や新興メーカーの技術力向上により、国際的な競争環境は変化しています。これまで低コストを追求し、海外に生産拠点を移した企業が多かったものの、昨今ではその効果が薄れつつあります。例えば、中国の製造業では人件費が増加しており、競争優位性が低下しています。
その結果、企業は単にコストを抑えるだけでなく、製品の品質や生産効率も重要視するようになりました。量から質への転換が求められる中、ファクトリーオートメーションの導入がますます進んでいます。具体的には、全自動に近い生産ラインの実現や、センサー、ロボット技術を駆使して生産プロセスの最適化が行われています。
労働人口減少への対策
少子高齢化の進行により、日本の労働人口は著しく減少しています。2030年には、16~64歳の就労世代が1,400万人減少する予測が立てられています。この課題に対処するためには、省人化に寄与するファクトリーオートメーションの導入が必要不可欠です。
人に依存した製造プロセスは、今後ますます人手不足によって成り立ちにくくなるため、効率的な生産システムの構築が急務です。ファクトリーオートメーションは、労働力不足を補い、生産の持続可能性を高める重要な手段となります。
ファクトリーオートメーション(FA)のメリット
それでは、ファクトリーオートメーション導入が企業にもたらすメリットをご紹介します。
人件費削減
ファクトリーオートメーションの大きな利点は、企業における人件費の削減が可能であるという点です。
日本の製造業では、各工程に多くの人手が要求され、これがコストの上昇要因となっています。中でも、日本企業が中国などのアジア諸国へ生産拠点を移す背景には、労働力コストの低下という理由があります。
しかし、国内での人件費が高騰する中、海外生産のコストメリットは減少しています。そのため、産業用ロボットを活用することが、企業の人件費削減のための有効な手段とされています。
品質の維持・向上
日本のものづくりは長年にわたり職人の技術に支えられてきましたが、少子高齢化の影響で職人技の継承が難しくなっています。 このような背景から、ロボットを取り入れた自動化システムが求められます。
ロボットは一定の精度で作業を繰り返すため、品質の安定性を向上させることができます。 人手不足を補いながら、製品の品質を確保するために、ファクトリーオートメーションは欠かせません。
生産効率の向上
ファクトリーオートメーションは、生産ライン全体の効率を改善する手段として重要です。特にロボットの導入により、自動化されたプロセスは人間による作業よりも迅速かつ正確に行われます。
これにより、生産速度が向上し、業務の滞ることなく安定した生産を実現できます。自動化によって重複する作業が削減されれば、結果としてリソースの最適化も図れるでしょう。
ファクトリーオートメーションのデメリット
ファクトリーオートメーションには、初期投資費用の大きさがデメリットとして挙げられます。導入には高度な機器やシステムの購入が必要となり、企業にとっては大きな負担になります。
また、現場での雇用不安も重要なポイントです。自動化が進むことで、従業員の職が失われる可能性があるため、企業はこの問題に真剣に向き合う必要があります。これらのデメリットを十分に考慮した上で、導入を検討することが求められます。
初期投資費用がかかる
ファクトリーオートメーションを導入する際、最も重要な要素の一つが初期投資費用です。生産ラインを自動化するためには、まずシステムの導入が欠かせませんが、このプロセスには多くの費用が伴います。
設備投資として、まず必要なのはロボットとその制御システムです。ロボット導入のための費用は、数十万円から数百万円にわたります。例えば、組み立てライン用の産業用ロボットは、基本的なモデルでも約150万円からの価格の場合が多く、特殊な機能を持つものになるとさらに高額になります。
さらに、これらのロボットを効果的に動かすためには、高度なプログラミングや制御技術が必要です。そのためには、専門の技術者を雇用することが不可欠であり、人件費が新たな初期投資として追加入ります。技術者の給料は業界によりますが、年収で400万円から700万円程度が一般的ですので、雇用コストもかなりの額になることがあります。
また、導入したロボットや機械の安定的な稼働を維持するためには、定期的なメンテナンスが必要です。これにかかる費用も考慮しなければなりません。メンテナンス契約を結ぶことにより、年間で数十万円の費用が発生することも少なくありません。
その他にも、各設備の連携を考慮したシステム設計や安全対策を講じるための費用も必要です。これらを踏まえると、ファクトリーオートメーションの初期投資は決して軽視できない額になることが多いのです。初期投資をしっかりと計画することが、成功するファクトリーオートメーションのカギと言えるでしょう。
雇用への懸念
ファクトリーオートメーションは、ロボットや機械により多くの工程を自動化することで、業務効率の向上が期待されますが、その一方で既存の仕事が奪われるという懸念が広がるのも事実です。
特に製造業においては、これまで人間の手で行われていた多くの作業が機械化され、求人の減少が見込まれるため、転職を考えている人々にとっては危惧の念を抱く要因となります。例えば、ある自動車工場では、組立ラインに全自動ロボットを導入した結果、従来の作業員の数が大幅に減少しました。このような状況が広がることでキャリアの選択肢が狭まるのではないかと心配する声が多く聞かれます。
しかし、ファクトリーオートメーションが進む中でも、全ての職種が消失するわけではありません。例えば、ロボットのプログラミングやメンテナンスを行う専門職は、逆に需要が高まります。企業はこのような専門知識を持つ人材を確保するために、教育制度や研修プログラムを整備する必要があります。これにより、労働市場における新たな転職機会が生まれる可能性があります。
さらに、ファクトリーオートメーションの導入には、工場の効率化だけでなく、安全性の向上や生産品質の安定といった利点もあります。これに関連する職種が新たに生まれる中で、求められるスキルや職能は変化し、適応することが重要です。
したがって、仕事を奪われるという懸念には現実的な側面があるものの、同時に新たな職務や役割が発生することも事実であり、企業と労働者はその変化に対して柔軟に対応する必要があります。
ファクトリーオートメーションを実現するシステム一例
ファクトリーオートメーションを実現するには、自動化に関連する各種システムが欠かせません。いくつかご紹介いたします。
PDM(製品情報管理システム)
PDMとは、Product Data Managementの略で、製品情報管理システムを指します。このシステムは、CADデータやBOMなどの製品や設計に関連する情報を一元的に管理します。
PDMは、設計部門と他の部署との間で情報共有や連携を促進し、生産性の向上を助ける役割を果たしています。これにより、製品開発プロセス全体の効率化が図れます。
PLM(製品ライフサイクル管理)
PLMとはProduct Lifecycle Managementの略で、製品ライフサイクル管理を指します。設計から開発、保守、廃棄、リサイクルに至るまで、製品の全過程を一元管理するシステムです。
この管理手法により、効率的な情報共有が実現し、企業の利益最大化に寄与します。最近では、IoTなどのデジタル技術が注目され、これらを活用してものづくり体制を強化する企業が増加しています。PLMシステムはその中で重要な役割を果たしています。
CAD(コンピュータ支援設計)
CADとはコンピュータ支援設計の略で、設計や図面作成に用いるシステムです。大手メーカーが製品開発を行う際には、機械や部品の設計に欠かせないツールとなっています。
1960年代には航空機メーカーが二次元CADを開発し、以来自動車や機械系の設計で広く利用されるようになりました。今日では、CADは特に3DCADへの進化が進んでおり、設計の効率化や精度向上に寄与しています。
CAM(コンピュータ支援製造)
CAMとはコンピュータ支援製造を指し、製造過程において機械の操作や管理を支援するシステムです。FA(ファクトリーオートメーション)においては、CADで設計されたデータを基に、加工機械へ直接指示を出す役割を果たします。これにより、手作業による誤差を減少させ、効率的な生産が可能となります。また、設計と製造の連携が向上するため、全体の生産性向上に寄与します。
CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)
CAEは、設計や開発において非常に重要なシステムです。コンピュータを用いて製品の性能を事前にシミュレーションし、機能が目的に合っているかを計算します。これにより、従来の試作段階で発生する問題を早期に発見でき、効率的な設計プロセスを実現します。
CADで製図を行う前に数値解析を行うことで、時間とコストの削減が可能です。CAEは製品開発における欠かせないツールとなり、研究者やエンジニアの業務を円滑に進める効果があります。
CAT(コンピュータ支援テスト)
CATはコンピュータ支援テスト(Computer Aided Test)の略で、テスト工程を効率化するためのシステムです。このシステムは、CAEと組み合わせることで、コンピュータ上でテストデータを生成し、自動的にテストを行います。その結果、得られたデータの解析も迅速に実施可能となり、品質向上に寄与します。
まとめ
ファクトリーオートメーション(FA)は、工場の生産を自動化して効率を上げる仕組みです。ロボットやIT技術を活用することで、コスト削減や品質向上が期待できます。最近では、DXと組み合わせてデータ活用も進んでおり、よりスマートな工場運営が可能になっています。ただし、導入にはそれなりのコストがかかるうえ、雇用の問題も考えなければなりません。とはいえ、労働人口の減少が進むなかで、FAはこれからのものづくりを支える重要な存在になっていくでしょう。

西進商事コラム編集部
西進商事コラム編集部です。専門商社かつメーカーとしての長い歴史を持ち、精密装置やレーザー加工の最前線を発信。分析標準物質の活用も含め、業界をリードする知見を提供します。