
- INDEX目次
目次【非表示】
- 1. スチームトラップとは
- 1-1.スチームトラップの基本的な役割
- 1-2.スチームトラップが必要とされる理由
- 1-3.一般的なバルブとの違い
- 2.スチームトラップの主な種類と動作原理
- 2-1.メカニカル式スチームトラップ
- 2-2.サーモスタティック式スチームトラップ(温調式)
- 2-3.サーモダイナミック式スチームトラップ
- 3.適切なスチームトラップの選び方
- 3-1.用途に応じた選定
- 3-2.作動特性の考慮
- 3-3.設置条件とドレン量
- 4.スチームトラップの診断とメンテナンス
- 4-1.スチームトラップの異常の兆候
- 4-2.効果的な診断方法
- 4-3.定期的なメンテナンスの重要性
- 5.スチームトラップ選定の新しい選択肢 ― スチームセーバー
- 5-1.スチームセーバーの特徴
- 5-2.なぜ今スチームセーバーなのか
スチームトラップとは
スチームトラップとは、蒸気システム内で発生するドレン(凝縮水)や空気を自動的にシステム外へ排出する自動弁を指します。JIS規格では「機器、配管などからドレンを自動的に排出する自力式のバルブの総称」と定義されており、蒸気を極力漏らさずにドレンだけを排出するという役割を担っています。これにより、蒸気の有効利用と設備の安定稼働に大きく貢献します。本記事では、スチームトラップの基本的な役割と必要性から、主要な種類ごとの詳細な構造と原理、さらに適切な選定方法や診断・メンテナンス方法までを網羅的に解説します。
スチームトラップの基本的な役割
スチームトラップの基本的な役割は、主に「効率的なドレンの排出」、「効率的な空気の排出」、「蒸気の漏洩防止」の3点に集約されます。蒸気が冷えることで発生するドレンは、蒸気配管内や装置内に滞留すると、熱伝達面積を減少させ、加熱効率の低下を招くため、速やかに排出する必要があります。スチームトラップは、復水(ドレン)を迅速に除去し、蒸気の有効活用を促進します。また、システム起動時に配管内に溜まる空気を排出することも重要です。空気が残存すると熱伝達が阻害され、設備の立ち上がりが遅れるだけでなく、熱交換器の腐食や熱効率の低下を引き起こす可能性があります。さらに、スチームトラップはドレンを排出しながらも蒸気を可能な限り漏らさないように設計されており、これにより貴重な熱エネルギーのロスを防ぎます。これらの役割を通じて、スチームトラップは蒸気システムの効率性、安全性、そして省エネルギー性に大きく貢献する不可欠な機器であると言えるでしょう。
スチームトラップが必要とされる理由
省エネ効果の向上と設備トラブルの防止
スチームトラップが必要とされる大きな理由の一つに、省エネ効果の向上と設備トラブルの防止が挙げられます。まず、ドレン(凝縮水)が蒸気配管内に滞留すると、熱交換器内部の熱伝達効率が低下し、熱効率が損なわれます。スチームトラップはドレンを速やかに排出することで、蒸気の持つ潜熱を最大限に活用し、熱効率を維持することで省エネ効果を発揮します。
ウォーターハンマー現象の防止
配管内でのドレンの滞留は、ウォーターハンマー現象を引き起こす大きな原因となります。ウォーターハンマーとは、蒸気の流れに押されたドレンの塊が高速で配管や機器に衝突し、大きな衝撃音と振動を発生させる現象です。これにより、配管や継手の損傷、バルブの破壊、さらには重大な事故につながる可能性もあります。スチームトラップは、このウォーターハンマーを防止するためにドレンを確実に排出する役割を担っています。加えて、ドレンの滞留は配管や機器の腐食、さらには凍結による破損の原因にもなり得ます。スチームトラップを適切に設置し、機能させることは、これらのトラブルを未然に防ぎ、設備の長寿命化に貢献するという効果も持ち合わせています。これらの理由から、スチームトラップは蒸気を使用するあらゆる設備において、安全性、効率性、そして経済性を確保するために不可欠な機器であると考えられます。
一般的なバルブとの違い
一般的なバルブが手動または自動で流体の流量を制御するのに対し、スチームトラップは「自動弁」として特定の条件下でドレンのみを排出し、蒸気の漏洩を最小限に抑えるという独自の機能を持っています。例えば、手動のボールバルブなどでもドレンを排出することは可能ですが、それには定期的な手動操作が必要であり、またドレンの発生量が一定でないため、排出し忘れや過剰な蒸気ロスが生じる可能性があります。一方、スチームトラップはドレンや空気の存在を自動で検知し、弁を開閉して排出します。この自動的な排出機能により、人間の介入なしに効率的なドレン処理が可能となり、蒸気の無駄な排出を防ぎ、省エネルギーに貢献します。また、一般的なバルブは単純に開閉する機能が主であるのに対し、スチームトラップは蒸気とドレンの特性(比重差、温度差、熱力学的特性差など)を利用した様々な作動原理を持っており、それぞれの種類が特定の用途や条件に最適化されています。この点が、単なる流体制御を行う一般的なバルブとの決定的な違いと言えるでしょう。
スチームトラップの主な種類と動作原理
スチームトラップは、その作動原理によって大きくメカニカル式、サーモスタティック式、サーモダイナミック式の3種類に分類され、それぞれの種類が異なる動作原理と機構を有しています。例えば、メカニカル式は蒸気と復水の比重差を利用し、フロートやバケットの浮力で弁を開閉する原理で動作します。サーモスタティック式は、蒸気と復水の温度差を感知し、感温体の膨張・収縮によって弁を動かす機構を持っています。また、サーモダイナミック式は、蒸気と復水の流速差などの熱力学的・流体力学的特性差を利用して作動します。これらの違いにより、各種類のスチームトラップは特定の用途や使用条件に特化したメリットとデメリットを持ち合わせています。それぞれの動作原理を理解することは、適切なスチームトラップを選定するために不可欠な知識となります。
メカニカル式スチームトラップ
メカニカル式スチームトラップは、蒸気と復水の比重差を利用して作動するスチームトラップです。主な種類としては、フロートの浮力を利用するフロート式と、バケットの浮沈を利用するバケット式があります。フロート式では、密閉された球形フロートやレバーを介して弁を動かすレバーフロート型が存在し、復水の流入によってフロートが浮上すると弁が開く機構を有しています。一方、バケット式にはオープン型フロートであるバケットが用いられ、復水が流入してバケットが沈下することで弁が開く機構となっています。ミヤワキ製バケット式スチームトラップでは、低排出量向けのESシリーズと高排出量向けのERシリーズがあり、いずれも優れた耐久性と閉弁性能を発揮するSCCV機構が採用されています。メカニカル式トラップは、ドレンが流入すると直ちに排出する連続作動が特徴であり、排出遅れがないため、蒸気輸送配管のリスクを低減し、装置の運転効率を高めることが期待されます。
フロート式トラップ
フロート式トラップは、メカニカル式スチームトラップの一種で、密閉された球形のフロート、またはレバーを介してフロートの動きを弁に伝えるレバーフロートの浮力を利用して作動します。具体的には、トラップ内にドレンが流入してくると、ドレンの液位が上昇し、その浮力によってフロートが浮き上がります。フロートが浮き上がると、弁が開いてドレンが排出される仕組みです。ドレンの流入量に合わせてフロートが浮き沈みするため、弁の開度が連続的に調整され、常にドレンを排出することができます。これにより、ドレンの滞留を防ぎ、蒸気システム全体の効率を高く保つことが可能です。フロート式トラップは、蒸気とドレンの比重差を利用しているため、ドレンの発生量が変動するような用途や、ドレンの即時排出が求められるプロセス装置などに適しています。また、静粛な動作が特徴であり、蒸気の漏洩も少ないとされています。ただし、激しいウォーターハンマーには比較的弱いという側面もあります。
バケット式トラップ
バケット式トラップは、メカニカル式スチームトラップの一種で、オープン型フロートであるバケットの浮沈を利用して作動します。動作原理は、まずバケットが自重で下降し、弁が全開になります。この時、本体内に流入したドレンはバケット内を満たし、余剰のドレンは開いている弁を通して排出されます。蒸気や空気などの気体がトラップ内に流入し、バケットの上部に溜まると、気体の量がある一定以上(バケットの約2/3程度)に達するとバケットに浮力が生じ、上昇して弁を閉じます。その後、トラップに再びドレンが流入すると、バケット内部の蒸気が凝縮し、バケット内の液体のレベルが上昇することでバケットが沈下し、再び弁が開いてドレンが排出されます。この一連の動作を間欠的に繰り返すことで、ドレンを自動的に排出します。バケット式トラップは、ウォーターハンマーに対して強い耐久性を持つという利点があります。しかし、空気の排出が遅い、ドレン量が少ない場合に蒸気の漏洩が発生する可能性がある、入口圧力が急激に低下すると蒸気を漏洩する可能性がある、といった欠点も持ち合わせています。また、過熱蒸気には使用できないという制約もあります。
サーモスタティック式スチームトラップ(温調式)
サーモスタティック式スチームトラップ、通称「温調式トラップ」は、蒸気と復水(ドレン)の温度差を利用して作動するタイプのスチームトラップです。このトラップの主要な構成要素は、感温体である「サーモエレメント」です。サーモエレメントは、内部に水とアルコールの混合液やワックスが封入された金属製カプセルやバイメタルなどで構成されており、温度の変化に応じて膨張・収縮する特性を持っています。復水は発生時点では飽和温度ですが、放熱に伴って温度が低下します。サーモスタティック式トラップは、このドレンの温度低下を感知し、サーモエレメントが収縮することで弁が開き、ドレンが排出されます。蒸気がトラップに到達して温度が上昇すると、サーモエレメントが膨張して弁が閉じる仕組みです。温調式トラップは、あらかじめ作動温度を自由に設定・変更できる特徴を持ち、特にスチームトレース用として開発された省エネトラップとしても知られています。これにより、高粘性流体の凝固防止や計装機器の凍結防止など、排出ドレンの温度管理が必要な用途で効果を発揮します。ただし、飽和温度よりも低い温度で開閉弁するように設定する必要があるため、ドレンの滞留が若干発生する可能性がある点や、ベローズの疲労や腐食により耐久性に劣る場合がある点には注意が必要です。
温調式トラップの仕組み
温調式トラップの仕組みは、蒸気と復水の温度差を敏感に感知し、その変化に応じて弁の開閉を行う点にあります。起動時、配管内には冷えた復水や空気が存在します。この低温状態では、トラップ内部の感温体が収縮しているため、弁は全開状態を保ち、初期の冷水や空気を速やかに排出します。ドレンの温度が次第に上昇し、飽和温度に近づくと、感温体が膨張し始め、弁を閉じます。これにより、蒸気の漏洩を防ぎ、熱エネルギーの無駄を最小限に抑えます。そして再びドレンが溜まり、温度が下がると、感温体が収縮して弁が開き、ドレンが排出されるというサイクルを繰り返します。この温度変化を利用した動作により、温調式トラップはドレンを一時的に溜め込み、設定された温度以下になった場合に排出するという制御が可能です。特に、配管内の流動性確保や凍結防止を目的とした保温トレーシングなど、ドレン排出温度を調整したい用途に有効です。ただし、温調式トラップは蒸気とドレンの温度が等しくなる飽和温度に設定すると蒸気が流れ続けてしまう可能性があるため、通常は飽和温度よりも10℃程度低い温度を目安に設定されます。このように、温調式トラップは温度を基準とした繊細な制御を実現するスチームトラップです。
サーモエレメントの役割
サーモエレメントは、サーモスタティック式スチームトラップの心臓部となる重要な役割を担う部品です。熱エネルギーと機械的エネルギーを変換する素子であり、内部に封入されたワックスや液体、またはバイメタルなどの感温体が、温度変化に応じて膨張・収縮する特性を利用しています。具体的な役割としては、トラップ内の流体温度を感知し、その温度に応じてピストンの移動量(リフト量)に変換することで弁の開閉を制御します。例えば、ドレンの温度が下がると、サーモエレメント内のワックスが収縮し、弁を開放してドレンを排出します。逆に、蒸気が流入して温度が上がると、ワックスが膨張して弁を閉じ、蒸気の漏洩を防ぎます。サーモエレメントの大きな特徴は、電源を必要としない自力式の作動であることや、コンパクトなサイズで大きな力を発生できる点です。また、封入されたワックスの特性を調整することで、作動温度や作動荷重、リフト量を自由に設定できるため、様々な用途や条件に合わせたカスタマイズが可能です。このように、サーモエレメントは、スチームトラップが流体の温度変化に自動的に応答し、効率的なドレン排出と省エネルギーを実現するための不可欠なエレメントと言えるでしょう。
サーモダイナミック式スチームトラップ
サーモダイナミック式スチームトラップは、蒸気と復水(ドレン)の熱力学的特性、特に流速差や凝縮作用、運動エネルギーと圧力エネルギーの関係を利用して作動するタイプのスチームトラップです。この種類の代表的なものとしては、ディスクが弁体として機能する「ディスク式トラップ」があります。シンプルな構造に反して、動作原理は複雑であり、内部のディスクが圧力変化によって上下することで弁の開閉を行います。サーモダイナミック式は、コンパクトで頑丈な構造が特徴であり、ウォーターハンマーや凍結にも強いという利点があります。また、幅広い圧力範囲で使用可能で、スチームトラップのサイズに比べて高いドレン排出能力を持つことも特徴です。これらの利点から、スペースが限られる場所や、高圧・過熱蒸気が使用されるような過酷な条件下での使用に特に適しています。ただし、低圧や負荷変動が激しい環境では動作が不安定になることがあり、排出音が大きい場合があるといったデメリットも存在します。
ディスク式トラップ
ディスク式トラップは、サーモダイナミック式スチームトラップの代表的な種類であり、その構造は非常にシンプルで、可動部品はキャップ内部の平面上に位置する一枚の円盤状のディスクのみです。このディスクが弁体として機能し、弁座に密着することで閉弁し、弁座から離れることで開弁します。その動作原理は、蒸気とドレンの熱力学的な性質、特に圧力変化を利用しています。始動時、トラップ内に低温のドレンや空気が流入すると、ディスクの下面にかかる圧力が上面よりも高くなり、ディスクが浮き上がってドレンや空気が排出されます。その後、高温の蒸気が流入すると、ディスク上部の変圧室に蒸気が溜まり、放熱によって凝縮する際に圧力が低下します。この圧力差と、流速が速い蒸気によるベルヌーイの定理が組み合わさることで、ディスクは弁座に吸着され、弁が閉じる仕組みです。TLVのディスク・スチームトラップの中には、立ち上がり時の空気障害を防ぐための自動ブローオフ装置が内蔵されたものや、二重蓋構造によって外乱の影響を受けにくくし、省エネ性と迅速なドレン排除を両立させた製品もあります。ディスク式トラップは、コンパクトで軽量、かつ頑丈な構造でウォーターハンマーや凍結に強く、幅広い圧力で作動し、高い排出能力を持つというメリットがあります。しかし、非常に低い差圧では動作が確実でない場合や、空気障害を発生することがあるといったデメリットも挙げられます。
適切なスチームトラップの選び方
適切なスチームトラップを選定するには、様々な要因を総合的に考慮し、用途に応じた使い分けが重要となります。例えば、ドレンの排出量や流量、必要な能力といった基本的な要求性能に加え、使用する蒸気の圧力や温度、配管のサイズなど、設置条件を詳細に把握する必要があります。さらに、各スチームトラップが持つ作動原理の違いや、連続排出と間欠排出のどちらが適しているかなど、作動特性も選定の大きなポイントです。例えば、ミヤワキやベンといった主要メーカーや、次世代のスチームトラップメーカーとして注目されているスチームセーバー社から、提供されている様々な型式の中から、それぞれの特徴を比較検討し、最適な一台を見つけることが求められます。不適切なスチームトラップを選んでしまうと、ドレンが正常に排出されずに設備トラブルを引き起こしたり、蒸気の無駄な漏洩により省エネルギー性が損なわれたりする可能性があるため、慎重な選定が不可欠です。
用途に応じた選定
スチームトラップを選定する際には、まず用途を明確にすることが非常に重要です。蒸気システムは多岐にわたり、それぞれで要求されるスチームトラップの特性が異なります。例えば、プロセス装置のように発生したドレンを即時に排出する必要がある用途では、ドレンを滞留させずに連続的に排出できるメカニカル式トラップ、特にフロート式が適しています。これは、装置の熱交換効率を最大限に高め、生産性を維持するために不可欠な特性です。一方、スチームトレースなど、復水温度が飽和温度より低下しても問題がない場合や、耐久性が重視される用途には、サーモスタティック式トラップが適しています。これは、排出ドレンの温度を調整できるため、流体の保温や凍結防止といった目的に合致します。また、スペースが限られている場所や、高圧・過熱蒸気が使用されるような過酷な条件下では、コンパクトで頑丈な構造を持つサーモダイナミック式トラップが有効な選択肢となります。このように、それぞれのスチームトラップには得意な用途があり、最適な性能を発揮するためには、使用する機器や装置の特性、運転条件、必要なドレン排出量などを総合的に考慮し、最も適した形式を選び分けることが不可欠です。不適切な形式を選定すると、正常に作動せず、ドレンの滞留や蒸気の漏洩といった問題を引き起こす可能性があるため、専門家のアドバイスを参考にすることも賢明な判断と言えるでしょう。
作動特性の考慮
スチームトラップを選定する上で、その作動特性を考慮することは非常に重要です。スチームトラップの作動原理は多岐にわたり、それぞれが異なる挙動を示します。例えば、メカニカル式はドレンの比重差を利用して連続的に排出する作動原理を持ち、ドレンの滞留を最小限に抑えたいプロセス装置などに適しています。一方、サーモスタティック式は温度差を利用して間欠的にドレンを排出するため、ドレン排出時の温度設定が可能な「温調トラップ」として、配管の保温や凍結防止といった用途で用いられます。このタイプは、飽和温度より低い温度で開弁するため、ドレンが一時的に滞留する特性があります。サーモダイナミック式は、流体の熱力学的特性差を利用して間欠的に作動し、シンプルで頑丈な構造から高圧蒸気や過熱蒸気に強いという特徴があります。しかし、低圧や負荷変動が大きい場合には動作が不安定になることがあります。スチームトラップの作動は、入口側と出口側の「差圧」によっても大きく影響されます。高圧の蒸気システムでは、それに耐えうる設計と作動特性を持つトラップを選ぶ必要があります。スチームトラップの型式によって、作動方式が連続排出か間欠排出かが異なり、その選択はシステム全体の効率や安定性に直結します。例えば、連続排出が望ましいプロセスではフロート式が、間欠排出でも問題ない用途ではディスク式やバケット式が検討されることになります。圧力や温度、ドレン発生量、そして必要な排出能力を考慮し、最適な作動特性を持つスチームトラップを慎重に選定することが、トラブルを未然に防ぎ、システムの性能を最大限に引き出す鍵となります。
設置条件とドレン量
スチームトラップを選定する際には、設置される場所の物理的な条件と、そこで発生するドレン量、すなわち排出量を正確に把握することが不可欠です。まず、配管の配置や取付方向は、トラップの種類によって適不適があります。例えば、一部のトラップは水平配管への設置が必須である一方、垂直配管にも対応できるものや、特定の向きでの設置が推奨されるものもあります。サイトグラスを設けることで、トラップの動作状況やドレンの排出状況を視覚的に確認できるようになりますが、サイトグラスの向きも設置場所によって考慮する必要があるでしょう。ドレンの回収方法、特に二次側配管への接続方法も重要です。ドレンが適切に回収されなければ、システム全体の効率低下やトラブルの原因となります。スチームトラップは、ドレンの容量を適切に処理できる能力を持っている必要があります。加熱装置や配管のサイズ、使用蒸気圧、外気温度などによってドレン発生量は変動するため、最大ドレン発生量に十分な安全率を見込んだ排出能力を持つトラップを選定することが重要です。次世代のオリフィス式トラップ提供メーカーとして知られるスチームセーバー社は、用途や使用条件に応じた適切なアドバイスを行っています。ドレン量の計算は、設備の設計段階で正確に行われるべきですが、既存の設備であれば、運転状況を詳細に分析し、実測値を参考にすることも有効です。
スチームトラップの診断とメンテナンス
スチームトラップは蒸気システムの効率と安全を維持するために非常に重要な機器ですが、経年劣化や使用条件によって異常が発生することがあります。そのため、定期的な診断と適切なメンテナンス管理が不可欠です。故障したスチームトラップを放置すると、蒸気漏れによるエネルギーロスやウォーターハンマー現象の発生、熱交換器の性能低下など、様々なトラブルを引き起こす可能性があります。診断方法としては、専用のチェッカーや聴診器を用いた音響診断、センサーによる温度変化の監視、そしてサイトグラスを用いた目視確認などが効果的です。これらの方法を組み合わせることで、異常の兆候を早期に発見し、適切なメンテナンス計画を立てることができます。定期的な点検と、必要に応じた部品交換や清掃を行うことで、スチームトラップの耐久性を高め、長期的な安定稼働を確保することが可能です。
スチームトラップの異常の兆候
スチームトラップの異常の兆候は、蒸気システムの効率低下やトラブルの直接的な原因となるため、早期の発見が重要です。主な異常として、「蒸気漏れ(ブロー)」、「ドレン詰まり」、「ウォーターハンマーの発生」、「フラッシュ蒸気の異常」などが挙げられます。蒸気漏れは、トラップが適切に閉弁しないことで発生し、本来排出されるべきドレンだけでなく、貴重な蒸気まで外部へ漏洩させてしまいます。これは大きなエネルギーロスとなり、燃料費の増大に直結します。ドレン詰まりは、トラップ内部に異物やスケールが蓄積したり、弁が固着したりすることで、ドレンが正常に排出されなくなる状態です。ドレンが滞留すると、配管や機器の腐食、熱交換効率の低下、さらには冬場には凍結による配管や機器の破損につながる可能性があります。特に注意が必要なのがウォーターハンマー現象です。これは、ドレンが配管内で高速の蒸気に押し流され、配管の曲がり角や弁に衝突することで発生する衝撃音と振動で、最悪の場合、配管や機器の損傷、破壊につながる重大なトラブルです。また、正常なフラッシュ蒸気(排出された高温ドレンが、大気圧で再蒸発する現象)とは異なる、連続的な蒸気噴出が見られる場合も、トラップの故障、特に弁の閉鎖不良の兆候である可能性があります。これらの異常の兆候を見逃さず、迅速に対処することが、蒸気システムの安全性と効率性を維持する上で非常に重要です。
効果的な診断方法
スチームトラップの故障を効果的に診断するには、複数の方法を組み合わせることが有効です。最も一般的な診断方法の一つは、聴診器を用いた音響診断です。正常なスチームトラップは種類に応じた固有の作動音を発するため、熟練した技術者はその音を聞き分けることで、蒸気漏れやドレン詰まりといった異常を判断できます。例えば、連続的な蒸気の吹き出し音や、水の流れるような音が聞こえる場合は、蒸気漏れの可能性があります。次に、表面温度の変化を測定するセンサーや温度計を用いた診断があります。正常なトラップは、ドレン排出時と閉弁時で表面温度に明確な変化が見られます。この温度変化が曖昧であったり、蒸気主管と同じような高温を維持していたりする場合は、蒸気漏れやドレン詰まりの可能性を示唆します。また、専用の超音波チェッカーを使用することで、人間の耳では聞き取りにくい高周波音を検知し、内部の流体の状態や弁の開閉動作をより正確に把握することが可能です。さらに、サイトグラスが設置されている場合は、実際にトラップの動作を目視で確認することができます。ドレンの排出状況や蒸気の有無を直接見ることで、作動不良を判断する手助けとなります。これらの診断方法を定期的に実施し、異常を早期に発見することで、迅速なメンテナンスに繋がり、蒸気システムの効率低下やトラブルを未然に防ぐことができます。
定期的なメンテナンスの重要性
スチームトラップの定期的なメンテナンスは、蒸気システムの長期的な安定稼働と省エネルギー性を確保するために極めて重要です。スチームトラップは、蒸気やドレンという過酷な条件下で常に動作しており、内部の弁体や弁座、その他の部品は摩耗や腐食、異物の詰まりといった影響を受けやすい性質を持っています。メンテナンスを怠ると、これらの劣化が進行し、最終的には故障や作動不良を引き起こす可能性が高まります。例えば、弁の摩耗や裂傷は蒸気漏れを発生させ、貴重な熱エネルギーの無駄につながります。ドレン詰まりは熱効率の低下やウォーターハンマー現象の誘発、さらには機器の破損を引き起こす原因にもなります。定期的な点検によってこれらの異常の兆候を早期に発見し、適切なタイミングで部品の交換や清掃を行うことで、トラップ本来の性能を維持し、耐久性を向上させることが可能です。特に、ストレーナーの清掃は、配管内のゴミやスケールがトラップ内部に侵入し、詰まりや弁の損傷を引き起こすのを防ぐ上で非常に重要です。また、スチームトラップには推奨される交換時期が設定されている場合が多く、これを参考に計画的な交換を行うことも重要です。適切なメンテナンスは、故障による突発的な運転停止リスクを低減し、結果として修理費用や生産ロスの削減にも貢献します。省エネ性を維持し、安定した設備稼働を実現するためには、スチームトラップの定期的な管理が不可欠であると言えるでしょう。
スチームトラップ選定の新しい選択肢 ― スチームセーバー

従来のスチームトラップには、それぞれの原理や特性に基づくメリット・デメリットが存在しますをご紹介しました。しかし実際の現場では、蒸気ロスの最小化、省エネ効果の最大化、さらに長期間の安定稼働が同時に求められることも少なくありません。そこで注目されているのが、蒸気漏れゼロを実現する新発想のスチームトラップ「スチームセーバー」です。
スチームセーバーの特徴
蒸気ロスを徹底的に防止
従来型トラップの課題であった微細な蒸気漏れをなくし、排出はドレンのみ。熱エネルギーを無駄にせず効率利用できます。
メンテナンス頻度を大幅に削減
可動部を持たない独自構造により、摩耗や破損のリスクが低減。長期にわたって安定した運用が可能です。
多様な用途に対応
工場配管から熱交換器、スチームトレースまで幅広い現場で導入が進んでいます。ドレン排出の安定性はもちろん、省エネ効果が目に見えて表れるのも大きな利点です。
なぜ今スチームセーバーなのか
近年、エネルギーコストの高騰やカーボンニュートラルへの取り組み強化により、蒸気設備の省エネは企業にとって重要なテーマです。スチームセーバーは、従来型トラップの「蒸気漏れ」「頻繁な点検交換」といった課題を解決し、省エネと効率運転を両立できる次世代型スチームトラップとして注目されています。

西進商事コラム編集部
西進商事コラム編集部です。専門商社かつメーカーとしての長い歴史を持ち、精密装置やレーザー加工の最前線を発信。分析標準物質の活用も含め、さまざまなコラム発信をします。