2025.04.23

エキシマレーザとは?用途や特徴・仕組みについて解説

エキシマレーザとは?用途や特徴・仕組みについて解説

エキシマレーザってなに?仕組み・特徴・用途をやさしく解説

エキシマレーザは、高精度な加工を可能にする技術として、さまざまな分野で活用されています。この技術は、特に精密な処理が求められる領域で威力を発揮しますが、実際にその仕組みや特徴についてはあまり知られていない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、エキシマレーザの基本的な仕組みから、特長や利点、そして実際にどのような用途で活用されているのかについて、わかりやすく解説します。医療分野や半導体製造など、どんな場面で役立つのかも具体的にご紹介しますので、ぜひご一読ください。

エキシマレーザーの原理:ガスの活性化と短波長光の発生

エキシマレーザは、特定のガスを使って非常に強い紫外線を作り出すレーザーです。ここでは、エキシマレーザがどのように紫外線を発生させるのかを、簡単に説明します。

1. ガスを電気で活性化する

まず、エキシマレーザでは、希ガス(アルゴンやネオンなど)とハロゲンガス(塩素やフッ素など)を混ぜ合わせます。このガスを電気的に励起します。つまり、電気を使ってガス分子を「元気にする」ことで、そのエネルギーを引き出します。ガス分子が活発になることで、エネルギーを放出する準備が整います。

補足:ガスを「励起」するとは、ガス分子を元気にしてエネルギーを与えることです。

2. 激しくエネルギーを放出して紫外線が発生する

次に、ガス分子がエネルギーを放出し、その結果、紫外線光が発生します。この紫外線がエキシマレーザの光です。紫外線は非常に短い波長を持っているため、非常に精密な加工ができます。これにより、細かなデザインやパターンが必要な作業にも適しています。

補足:紫外線は目に見えない光で、普通の光よりも短い波長を持っています。これにより、非常に細かい部分を加工するのに最適なのです。

エキシマレーザの波長について

エキシマレーザは、紫外線領域で光を発するレーザーです。この光の波長は、193nm、248nm、308nm、351nmの4つの種類がよく使われます。波長というのは、光の長さを指し、エキシマレーザの波長は可視光(私たちが目で見ることができる光)よりもずっと短いです。つまり、エキシマレーザの光は、人間の目には見えないのです。

また、紫外線は波長の長さによって、UV-A、UV-B、UV-Cの3種類に分けられます。これらは、紫外線(UV)という名前で呼ばれるものの、波長が違うため、それぞれの光が持っている性質や、人体への影響も異なります。エキシマレーザの波長は、UV-C(紫外線C)の範囲に入ります。この範囲は、波長が短いため、非常に強力で精密な光を発することができ、高精度な加工や微細な処理に適しています。

エキシマレーザのメリットとデメリット

エキシマレーザの主なメリットは、熱影響が少ない点にありますが、デメリットとしては装置の維持費が高いことが挙げられます。

エキシマレーザのメリット

まずエキシマレーザの主なメリットは、非常に短い波長により高精度な加工が可能で、熱影響が少ない点にあります。この特性は、精密な微細加工や表面処理に適しています。加えて、紫外線領域の光を使用するため、特定材料への選択的な照射が可能で、用途が多岐にわたることも強みです。

エキシマレーザのデメリット

一方、デメリットとしては装置の維持費が高いことが挙げられます。エキシマレーザでは気体の活性状態を一定に保つ必要があり、そのための管理が複雑でコストがかかります。また、機器の取り扱いや操作には専門知識が求められ、初心者には扱いにくい側面もあります。これらの特性を踏まえ、適切な用途選定と運用が重要です。

エキシマレーザの用途とは?

エキシマレーザは、すごく精密に加工できることと、短い波長の光を使うことを活かして、いろんな場面で使われています。

1. 半導体製造分野

エキシマレーザは、非常に短い波長の光を使って、精密な加工が可能です。

フォトリソグラフィ(光を使って回路パターンを転写する技術)に用いられ、微細な回路の模様を正確に形成するために欠かせません。

2. 医療分野

血管治療

血管内の異常部分を除去する際に使用。

高精度な照射により、健康な組織への影響を抑えつつ治療が可能。

眼科

視力矯正手術(レーシックなど)に利用。

角膜を極めて精密に削ることができ、安全性と正確性が求められる手術に適しています。

皮膚科

特定の皮膚疾患(例:ウイルス性いぼ、白斑など)の治療に活用。

身体への負担が少ないため、患者に優しい治療法として使われています。

3. 産業・材料加工分野

金属、ガラス、プラスチックなど様々な材料の微細加工に使用。

特に、熱の影響を抑えた加工が求められる場面で、エキシマレーザの特性が活かされます。

新しい製品開発や高精度部品の製造を支える技術の一つです。

このように、エキシマレーザは半導体・医療・産業加工といった多様な分野で、それぞれの特性を活かして重要な役割を担っています。

エキシマレーザのレーザ加工種類

エキシマレーザーは、微細加工・薄膜形成・アニーリング・FBG加工などに使われます。短い波長の紫外線を使って、細かくて正確な、非接触の加工ができるのが特徴です。

微細加工

とても細かい加工が必要なとき、レーザ技術は欠かせません。中でもエキシマレーザは、短い波長の光を使って、とても精密な加工ができることで知られています。このレーザは、材料の表面を大きく変えずに、細かい部分だけをきれいに削ったり形を作ったりできるんです。

たとえば、ArFレーザーという種類のエキシマレーザは、透明なプラスチックや半導体の材料にも、すごく高い精度で加工できます。複雑な模様やパターンを作るのにもぴったりです。

また、エキシマレーザは、加工するときに材料に余計な熱をあまり加えないので、素材が傷んだり変わったりするのを防げます。そのおかげで、とても細かい構造を、きれいに、そして何度でも同じように再現できるんです。

最近では、レーザの動きを細かくコントロールする技術と組み合わせて、もっと繊細で複雑な加工もできるようになっていて、いろんな分野で使われるようになっています。

薄膜生成

薄膜を作るときに、エキシマレーザはとても役立ちます。というのも、このレーザは波長が短い光を使って、膜の厚さや質をすごく細かくコントロールできるからです。特に、半導体を作るときに必要な、とても小さなパターンを作る技術として、欠かせないものになっています。

また、レーザを使った「アブレーション加工」という方法で、これまでのやり方では難しかった、薄膜をムラなくきれいに作ったり、いらない成分だけを取り除いたりすることもできます。エキシマレーザは素材に直接触れずに加工できるので、余計な熱を与えずに、高性能な薄膜を作れるのもポイントです。

アニーリング

アニーリングは、レーザを使って材料の性質を良くするための熱処理のことです。特に、エキシマレーザを使ったアニーリングでは、短い波長の紫外線レーザを当てて、細かい部分だけをピンポイントで、しかも触れずに加熱できます。これによって、材料の中にある小さなキズや欠陥を直したり、表面をなめらかにすることができます。

いろいろなメーカーが、エキシマレーザを使ったアニーリング専用の機械を作っていて、特に精密な加工や半導体を作るときにとても重要な役割を担っています。レーザを使ったアニーリングは、昔ながらのやり方に比べて、処理が速く、ムラなくきれいに仕上がるのが大きなメリットです。

FBG(ファイバーブラッググレーティング)

FBG(ファイバーブラッググレーティング)は、光ファイバーの中に細かく並んだ模様のような「屈折率の変化」を作ることで、特定の波長の光だけを反射し、それ以外の光はそのまま通すしくみです。この「並び方(周期)」はレーザ光の波長に合わせて作られていて、特にレーザの世界では、波長を選んだり、安定させたりするのに役立っています。

FBGは、レーザが正確に発振するように調整したり、特定の波長だけを取り出すフィルターとしても使われます。このFBGは、レーザ光を当ててとても細かく加工して作るのが一般的です。中でも、エキシマレーザのような短い波長を持つレーザは、細かい模様をしっかり作るのにぴったりなので、FBG作りに向いていると注目されています。

このようなFBGは、光通信やセンシング技術、レーザ機器の性能アップなど、いろいろな分野でとても大切な役割を果たしています。

皮膚科におけるエキシマレーザの活用

皮膚科では、「エキシマレーザ」という特殊な紫外線を出すレーザーが注目されています。このレーザーは、紫外線の中でも特に狭い波長だけを使って、気になる部分にだけピンポイントで照射できるのが大きな特徴です。

そのため、周りの健康な皮膚にはできるだけダメージを与えずに、治療したい部分だけにしっかりアプローチできます。また、皮膚の深いところまでは届きにくいため、体への負担が少なく、副作用のリスクも抑えられるというメリットがあります。

これまでの紫外線治療に比べて、より高い精度で治療が行えるため、エキシマレーザは患者さんの負担を軽くしながら治療効果を高める方法として、広く使われるようになってきています。特に、なかなか治りにくい皮膚の病気にも効果が期待できるとして、皮膚科での活用が進んでいます。

まとめ

レーザ技術の中でも、エキシマレーザはとても短い波長の紫外線を出すレーザとして知られています。この短い波長のおかげで、とても細かくて高精度な加工ができるので、半導体を作るときの細かいパターン作りに広く使われています。

エキシマレーザの光の波長は、だいたい100ナノメートルから300ナノメートルくらいで、素材にあまり負担をかけずに、きれいで正確な加工を実現できます。

このレーザは、半導体だけでなく、医療の分野や、いろんな精密な加工が必要なところでも活躍していて、その特長を活かしてさまざまな分野で使われるようになっています。

西進商事コラム編集部

西進商事コラム編集部では、専門商社でありながら自社で精密装置の開発・製造も手がけるメーカーとしての立場から、レーザー加工や精密機器に関する幅広い情報を発信しています。