2026.05.11

レーザーマーキングとは?種類・仕組み・産業別活用事例をわかりやすく解説

レーザーマーキングとは?種類・仕組み・産業別活用事例をわかりやすく解説

製品にロゴや製造番号、QRコードなどを刻印・印字する方法として、レーザーマーキングが幅広い産業で使われています。インクを使わず、素材に直接加工を施すため、耐久性・清潔さ・精度の面で優れており、製造現場でのトレーサビリティ管理や品質向上に欠かせない技術となっています。
しかし、「レーザーマーキング」といっても、その種類や仕組みはさまざまです。素材や用途によって最適な方式が異なるため、導入を検討している担当者にとって、違いを正しく理解することが重要です。
本記事では、レーザーマーキングの基本的な仕組みから、代表的な種類、産業別の活用事例まで、わかりやすく解説します。 

レーザーマーキングとは

レーザーマーキングとは、レーザー光を素材の表面に照射することで、文字・数字・バーコード・QRコード・ロゴなどを刻印・印字する加工技術のことです。
従来のインクジェット印字やスタンプ印字と異なり、インクや消耗品を一切使用せず、素材に直接加工を行うため、以下のような特長があります。

  • 耐久性が高い(摩耗・薬品・高温にも消えにくい)
  • 高精度・高速な印字が可能
  • ランニングコストが低い(インク・版不要)
  • 非接触で素材を傷めにくい
  • QRコードや2次元コードの印字精度が高く、トレーサビリティ管理に最適
  • こうした特長から、自動車・電子部品・医療機器・食品包装など多岐にわたる業界で採用が進んでいます。

    レーザーマーキングの仕組み

    ① アブレーション(表面除去)
    レーザーのエネルギーで表面層を蒸発・除去し、凹状の刻印を残す方法です。金属・樹脂・セラミックなど幅広い素材に対応可能で、最もポピュラーな加工方式です。
    ② 変色・変質
    素材の表面を溶かさず、熱反応によって色を変化させる方法です。金属の酸化発色や樹脂の炭化によるコントラスト表現に使われます。製品の外観を損なわず、見た目の美しいマーキングが可能です。
    ③ 発泡・盛り上がり
    樹脂素材に対して内部から発泡を起こし、表面を盛り上がらせる方法です。触れるとわかる凸状のマーキングが特徴で、プラスチック製品などに多く用いられます。

    レーザーマーキングの主な種類

    レーザーマーキング機は、使用するレーザー光源の種類によって特性が異なります。代表的なレーザーの種類と、それぞれの特長を解説します。

    レーザー種類1,064nm主な対象素材特長
    ファイバーレーザー10,600nm金属全般・樹脂高出力・高速・長寿命。金属への刻印に最適
    CO₂レーザー1,064nm木材・ガラス・樹脂・紙高出力・高速・長寿命。金属への刻印に最適
    YAGレーザー355nm木材・ガラス・樹脂・紙パルス出力で精細な加工が可能
    UVレーザー532nm金属・セラミック熱影響が極小。デリケートな素材に最適
    グリーンレーザー銅・金・シリコン特殊金属や半透明素材への対応が得意

    ファイバーレーザーマーキング

    ファイバーレーザーは、光ファイバーを増幅媒体として使用するレーザーです。金属への刻印に最も適しており、ステンレス・アルミ・チタン・真鍮など幅広い金属素材に対応できます。
    出力が高く処理速度も速いため、大量生産ラインへの組み込みに向いており、自動車部品・電子部品・医療機器などで広く採用されています。メンテナンスコストが低く、装置の長寿命化が図れる点も導入時のメリットとして挙げられます。

    CO₂レーザーマーキング

    CO₂レーザーは、二酸化炭素を媒体とするガスレーザーで、木材・ガラス・革・紙・樹脂など非金属素材への印字・彫刻に優れています。波長が長く、金属には吸収されにくいため、非金属用途に特化したレーザーと言えます。
    汎用性が高く、食品業界・木工業・ガラス加工・パッケージング業界などで幅広く使われています。

    YAGレーザーマーキング

    YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーは、パルス出力による高ピークパワーが特長で、金属やセラミックへの精細な刻印が得意です。半導体素子のウエハや電子部品への微細加工にも対応可能で、電子・精密機器分野での採用実績があります。

    UVレーザーマーキング

    UVレーザーは波長が短く(355nm)、素材への熱影響が極めて小さい「コールドプロセス」が特徴です。ガラス・フレキシブル基板(FPC)・樹脂・医療用デバイスなど、熱に敏感な素材への印字に最適です。
    近年では半導体製造の微細化や医療機器の品質管理ニーズが高まるなかで、UVレーザーへの需要が増加しています。

    グリーンレーザーマーキング

    グリーンレーザー(532nm)は、銅・金・シリコンなど、ファイバーレーザーでは対応が難しい素材に有効です。特に銅は赤外線レーザーを反射しやすいため、グリーン波長による吸収率の高さが活かせます。EV(電気自動車)のバッテリー部材や電子回路基板への加工で注目されています。

    産業別活用事例

    レーザーマーキングはさまざまな産業で活用されていますが、その用途・目的は業界によって大きく異なります。主要な産業別に活用事例を紹介します。

    自動車産業

    自動車産業では、エンジン部品・ブレーキ部品・センサー類へのシリアルナンバーやロット番号の刻印に活用されています。部品ごとのトレーサビリティ(製造履歴の追跡)が厳しく求められるため、耐熱・耐油性の高いレーザー刻印が必須となっています。
    また、車体のVIN(車台番号)刻印にも使用されており、改ざん防止と品質証明の観点から、ファイバーレーザーが多く採用されています。アルミダイキャスト部品への印字にも対応でき、軽量化が進む現代の車体設計にも柔軟に対応できます。

    電子・半導体産業

    電子部品や半導体では、ICチップ・コンデンサ・抵抗器・基板などへの極めて微細なマーキングが求められます。YAGレーザーやUVレーザーが広く使われており、数百μm単位の精密な印字が可能です。
    半導体製造では、ウエハのIDマーキングやチップ個別の品番刻印にもレーザーマーキングが使用されています。非接触かつ熱影響が少ないことが、繊細な半導体素子への適用条件として重要視されています。

    医療機器産業

    医療機器には、UDI(医療機器固有識別子)と呼ばれる国際規格の識別コードの刻印が法的に義務付けられているケースがあります(米国FDAや欧州MDR規制)。外科手術器具・インプラント・内視鏡など、高い耐久性が必要な器具への刻印には、ファイバーレーザーまたはUVレーザーが適しています。
    特にステンレスやチタン製の医療器具は洗浄・滅菌を繰り返すため、消えない刻印が不可欠です。レーザーマーキングによる刻印は、薬品・熱・摩耗に対して高い耐性を持つため、医療業界での信頼性が確立されています。

    食品・飲料産業

    食品・飲料業界では、製造年月日・賞味期限・ロット番号などの可変情報の印字にCO₂レーザーが広く使われています。ボトル・缶・フィルムパッケージ・ガラス瓶など、さまざまな包材への対応が可能です。
    インクジェット印字と異なり、インクのにじみや乾燥不良がなく、高速ラインでの安定した印字品質が求められる食品製造環境に適しています。また、インク使用ゼロであるため、食品への混入リスクもなく、衛生面での優位性も評価されています。

    航空宇宙・防衛産業

    航空宇宙・防衛分野では、部品の品番・製造番号・認証マークの永久刻印が求められます。使用環境が過酷なため(高温・高圧・振動・薬品)、印字の耐久性が最重要条件です。チタン合金・インコネル・ステンレスなどの難削材への対応が求められることも多く、ファイバーレーザーが主流です。
    また、部品の軽量化・小型化が進むなかで、狭いスペースへの微細刻印ニーズも増えており、加工精度の観点からレーザーマーキングの採用が増加しています。

    樹脂・プラスチック製品

    家電製品・日用品・容器などのプラスチック製品には、製品名・型番・リサイクルマーク・警告表示などのマーキングが必要です。CO₂レーザーやUVレーザーが素材に応じて使い分けられます。
    特にUVレーザーは熱影響を最小限に抑えられるため、薄肉成形品や変形しやすい素材への印字に適しています。また、樹脂の種類(ABS・PP・PET・ポリカーボネートなど)によって最適なレーザー条件が異なるため、事前の素材確認が導入の重要なポイントです。

    レーザーマーキング導入時の検討ポイント

    レーザーマーキング機を導入する際には、以下のポイントを事前に整理することが重要です。

    対象素材を明確にする

    どの素材にマーキングするかによって、最適なレーザー種類が決まります。金属系ならファイバーレーザー、非金属系ならCO₂レーザー、熱に弱い素材はUVレーザー、という基本方針から検討を始めましょう。

    印字内容と精度要件を確認する

    印字する内容(バーコード・QRコード・文字・ロゴなど)によって必要な解像度が異なります。また、極めて微細な印字が必要な半導体や医療機器の場合は、高精度のUVまたはYAGレーザーが適します

    生産ラインへの組み込み方式

    スタンドアローン型(単独設置)で使うのか、生産ラインに組み込むインライン型にするのかによって、装置仕様や連携システム(PLC・データベース連携など)が変わります。生産数量・タクトタイムとの整合性も重要な確認事項です。

    ランニングコストと保守体制

    レーザーマーキング機はインクを使用しないためランニングコストは低い傾向にありますが、レーザー光源の寿命(ファイバーは約10万時間、CO₂は交換が必要)やメンテナンスの体制は事前に確認しておくことが大切です。

    レーザマーキングと組み合わせて使われる関連技術・製品

    レーザマーキングは、製品への刻印・印字を行う技術ですが、製造現場ではその前後の工程と組み合わせることで、はじめてトレーサビリティが完成します。ここでは、レーザマーキングと併用されることの多い関連製品・サービスを提供する企業をご紹介します。

    刻印コードの読み取り

    レーザマーキングで金属や樹脂に直接刻印されたQRコード・2次元コード(DPMコード)を正確に読み取るには、ダイレクトパーツマーキングに対応した専用バーコードリーダーが必要です。株式会社マーストーケンソリューションは、RFID・バーコード・2次元コードなど自動認識システムの総合メーカーとして、製造・物流・医療など幅広い分野に対応した産業用リーダーを提供しています。

    刻印データの工程管理・追跡

    レーザマーキングで付与したシリアルナンバーやQRコードは、製造工程全体で活用されてこそ意味を持ちます。スマートクラフト株式会社が提供するクラウド型トレーサビリティシステム「Smart Craft」は、低コスト・短期間で製造現場のデータ収集・工程管理・品質記録の一元化を実現します。レーザマーキング導入と合わせて検討したいシステムのひとつです。

    まとめ

    レーザーマーキングは、金属から樹脂・ガラス・食品包材まで幅広い素材に対応できる、現代製造業に欠かせない印字・刻印技術です。インクレスで耐久性が高く、トレーサビリティ対応・品質管理・法規制対応など、多様なニーズに応えられる点が評価されています。
    導入にあたっては、素材・印字内容・生産環境に合ったレーザー種類と仕様の選定が重要です。まずは現在の課題(印字品質の安定化・コスト削減・トレーサビリティ強化など)を整理したうえで、専門メーカーや販売代理店への相談を検討することをおすすめします。

    関連情報

    弊社SEISHINでは、産業用レーザーマーキング機の販売・導入サポートを行っています。数十μmの極小印字にも対応しており、半導体部品や医療機器など、精密さが求められる用途にも力を発揮します。
    素材や用途に応じた最適な機種選定から、ライン設計・立ち上げのご支援まで対応しております。導入をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください

    • レーザーマーキングとインクジェット印字の違いは何ですか?

      レーザーマーキングはインクを使わず、素材そのものを加工して印字するのに対し、インクジェットは表面にインクを付着させる方式です。
      そのためレーザーマーキングは、耐久性・耐薬品性・耐熱性に優れ、長期間消えにくいという特長があります。一方で、初期導入コストはレーザーの方が高くなる傾向があります。

    • どのレーザーを選べばいいのか判断基準はありますか?

      基本は「素材」で判断します。
      金属にはファイバーレーザー、非金属(樹脂・紙・木材など)にはCO₂レーザー、熱に弱い素材にはUVレーザーが適しています。
      加えて、印字精度や加工スピード、生産ラインへの組み込み有無も選定の重要なポイントです。

    • レーザーマーキングは本当に消えませんか?

      完全に消えないわけではありませんが、摩耗・薬品・高温環境に対して非常に強く、通常の使用環境では長期間視認性を維持できます。
      特に金属への刻印は半永久的なマーキングとして扱われることが多く、トレーサビリティ用途に適しています。

    • 導入前に必ず確認すべきポイントは何ですか?

      以下の4点が重要です。

      • 対象素材(何に印字するか)
      • 印字内容と必要な精度(QRコード・微細文字など)
      • 生産ラインとの接続方法(単体 or インライン)
      • ランニングコスト・保守体制

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    西進商事コラム編集部

    西進商事コラム編集部です。専門商社かつメーカーとしての長い歴史を持ち、精密装置やレーザー加工の最前線を発信。分析標準物質の活用も含め、さまざまなコラム発信をします。

    備考

    本記事は構成・内容設計を人間が行い、AIを校閲および品質向上の補助として活用しています。

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