SEISHIN Story

最初に、西進商事の歴史について教えてください。

三好西進商事は、70年以上にわたり分析用標準物質や試験機器などを輸入販売してきました。その歩みは、日本経済の成長とともにあったと言えます。1950年代後半、白黒テレビなどの家電製品が一般に普及しはじめ、半導体や電子部品の需要が拡大します。それに伴い、製造に欠かせない電極などの材料となるペースト（電導塗料）も飛躍的に増大しました。アメリカのデュポン社の日本総代理店であった西進商事は、同社製ペーストの販売数を増やし、日本のエレクトロニクス産業を牽引することになります。しかし、年々成長する日本市場というビジネスチャンスを前に、デュポン社は黙っていませんでした。1970年代前半には日本に販売子会社を設立し、代理店契約は解除されてしまいます。

熱心に販売していたのに、ひどい話ですね。

三好輸入商社業界ではよくある話なんです。販売権を取得し、取扱商品がヒットすると、本社が日本に代理店を置き、自ら販売するようになる。お客さまにとっては商社が抜け、直接購買できるため価格を抑えられるメリットがありますが、これまで必死で拡販してきた我々としては、正直つらいですね（苦笑）

販売できるものがなくなった西進商事は、どうしたのですか？

三好デュポン社の代わりとして目を付けたのが、アメリカにあるエンゲルハード社製のペーストでした。その後、同社製メタロオーガニック金ペーストが、大手電機メーカーのファクシミリ用サーマルヘッドに採用されることになり、家庭用ファクシミリの普及にあわせて需要がぐんぐんと伸びていきます。現在では、駅の自動券売機やコンビニのレジなどにも採用されるロングセラー商品になっています。

西進商事のたくましさを物語っているようです。

三好ペースト以外にも、電子基板などの半導体を印刷するイギリスのデック社製印刷機をはじめ、電子部品製造に欠かせない乾燥機や焼成機、各種試験機、レーザートリミング機などの輸入販売も行いました。お客さまや時代が求めるものを感じ取り、他社に先駆けて輸入販売するところも、我々の営業力の強みと言えるんじゃないですかね。

輸入商社として、他にはどのようなものを取り扱っていたのですか？

三好そうですね、過去には、オランダ・フィリップス社製の電気鉛筆削りやヘアドライヤーなどがありました。ちょっと変わったものでは、セスナ機の操縦シミュレーター、NATO（北大西洋条約機構）軍の暗視スコープ、ウサギの毛皮ショールなどでしょう。

暗視スコープですか？

三好ええ、貿易自由化の波もあり、お客さまの要望に応えるべくさまざまなものを輸入してきました。

これは売れなかったというものはありますか？

三好意外とあります（笑）。これはちょっと早すぎたかなというものでは、ステビアがあります。

ステビアはとても認知度が高いですよね？

三好ええ、今は甘味料としてよく知られていますよね。1973年に、我々はいち早く、パラグアイからステビア葉を輸入し、天然甘味料ステビアサイドの開発に成功しました。しかし、当時は認知度が低く、ビジネスが大きくなる前に大手企業が進出して来てしまって、大量生産に至る前に撤退を余儀なくされました。

なるほど。そうした世界のさまざまなものを輸入することで、
目が養われたと言えそうですね。

三好そうだと思います。例えば、精密装置に関して言えば、世界最高峰の機器やその仕組みを細部まで見てきたことが、自社ブランド装置の開発につながったと思います。

西進商事の営業力の特徴はなんだと思われますか？

三好技術革新や法規制の変更などを常にキャッチアップし、時代の変化や市場ニーズからビジネスチャンスを作ることではないでしょうか。太陽電池やLEDなど、ブームが起こるときには、すでに西進商事が関連装置を取り扱ってきました。また、「面白そうなものなら、なんでもする」というフロンティア精神とユニークで柔軟な視点が、お客さまからの信頼を得ている理由なのかもしれません。これからも「お客さまの要望に応える」という思いは変わることなく、さまざまな製品を取り扱っていき、ヒットさせたいと思っています。