2025.10.08

NANDフラッシュとは?SSDに使われるメモリの種類やNORとの違いを解説

NANDフラッシュとは?SSDに使われるメモリの種類やNORとの違いを解説

NANDフラッシュは、電源を切ってもデータが消えない不揮発性メモリの一種です。1987年に東芝(現キオクシア)によって発明され、従来のフラッシュメモリであるNOR型と比較して、大容量化や書き込み・消去の高速化が容易な点が特徴です。

このメモリは、SSDやUSBメモリ、SDカード、スマートフォンの内部ストレージなど、身近なデータストレージに広く活用されています。 NANDフラッシュは、電源がなくても記憶を保持できる不揮発型のメモリであるため、機器の電源オフ時でもデータが失われる心配がありません。

NANDフラッシュがデータを記録する仕組みを解説

NANDフラッシュメモリのデータ記録の仕組みは、セルと呼ばれる最小単位の領域に電荷を蓄えることで「0」と「1」のデジタルデータを識別します。このセルは、フローティングゲートと呼ばれる絶縁された領域に電子を閉じ込める構造をしており、電子の有無や量によってデータの状態を表現する仕組みです。電圧を印加することで電子をフローティングゲートに注入したり、そこから引き抜いたりしてデータの書き込みや消去を行います。この電荷が電源を切っても保持されるため、NANDフラッシュは不揮発性メモリとして機能します。

NANDフラッシュとNORフラッシュの主な違い

NANDフラッシュとnorフラッシュは、データ保存の仕組みや得意とする用途において違いがあります。NANDフラッシュはデータの高速な書き込みや大容量化に適しており、SSDやUSBメモリ、SDカードなどに広く利用されています。一方、norフラッシュはデータの信頼性が高く、組み込みシステムやプログラムコードの保存など、データが頻繁に書き換えられない用途で強みを発揮します。これらの特性の違いから、それぞれのフラッシュメモリは異なる製品で活用されています。

高速な書き込みが得意なNANDフラッシュ

NANDフラッシュメモリは、特にデータ書き込みにおいて優れた性能を発揮します。その大きな理由の一つとして、一度に複数のデータをまとめて書き込む「ページ書き込み」という方式を採用している点が挙げられます。NORフラッシュメモリが、1バイト単位での書き込みを得意とするのに対し、NANDフラッシュは、より大きなデータブロックを一括で処理できるため、大容量データの書き込み速度が飛躍的に向上します。例えば、SSDやUSBメモリのように、動画ファイルや高解像度の画像データといった大容量のファイルを頻繁に書き込む用途において、NANDフラッシュは非常に効率的です。また、連続したデータの書き込みにも強みがあり、PCの起動やアプリケーションの読み込み、ファイルのコピーといった日常的な操作において、体感速度の向上に大きく貢献しています。この高速な書き込み性能は、現代のデジタルデバイスに不可欠な要素となっており、データの保存だけでなく、システムのパフォーマンス全体を底上げする役割を担っていると言えるでしょう。

NORフラッシュは、データ保持の信頼性が高いことが特長です。NANDフラッシュがデータの書き換えを繰り返すうちにデータが破損する可能性があるのに対し、NORフラッシュは基本的に保持したデータが壊れにくい性質があります。

また、NORフラッシュはランダムアクセスに強く、データに直接アクセスして読み込むことが可能です。そのため、ルーターやプリンター、デジタルカメラ、GPS、車載機器、携帯電話、PDAなどの組み込みシステムにおいて、OSやファームウェアの格納用メモリとして利用されることが多いです。

特に、CPUが起動してすぐに実行するブートコードの格納には、信頼性の高いNORフラッシュが適しています。 以前は、NORフラッシュはNANDフラッシュに比べてエラー訂正(ECC)が不要とされていましたが、半導体プロセスの微細化により、現在ではNORフラッシュでもECCの利用が必要となるケースが増えています。

NORフラッシュは書き込み速度がNANDフラッシュよりも遅く、高集積化が難しいという欠点もありますが、近年ではマルチビット化により大容量化が進み、高速書き込みや消費電力の改善が図られた製品も登場しています。 このように、NORフラッシュはその高い信頼性から、今後も様々な組み込みシステムでの活用が期待されています。

NANDフラッシュの4つの種類とそれぞれの特徴

NANDフラッシュメモリには主に4つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。この種類の違いは、1つのセルに保存できるビット数で決まり、これにより性能やコスト、耐久性が大きく変わる点がポイントです。具体的には、SLC(Single Level Cell)、MLC(Multi Level Cell)、TLC(Triple Level Cell)、QLC(Quad Level Cell)の4つのタイプがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。これらの種類は、用途に応じて使い分けられており、データの安定性や読み書き速度、コストパフォーマンスを考慮して最適なチップが選定されています。

SLC:最も高速で長寿命なセル方式

SLC (Single Level Cell)は、1つのセルに1ビットのデータを保存する方式です。この方式は、NANDフラッシュの中でも最も高速な読み書き速度と高い耐久性を誇ります。1つのセルに1ビットのみを保存するため、データの読み書き時の電圧判定が容易で、エラーが発生しにくいという特徴があります。そのため、データの信頼性が非常に高く、書き換え回数も一般的に9万回から10万回と、他のセル方式と比較して圧倒的に長寿命です。

しかし、その分コストが高くなるというデメリットも存在します。高い性能と信頼性が求められるエンタープライズ向けのSSDや、産業機器など、ミッションクリティカルな用途で主に採用されています。例えば、サーバーやデータセンターでは、24時間365日稼働し続ける必要があり、データの破損はシステム全体に甚大な影響を及ぼすため、SLCの特性が非常に重要視されるのです。また、産業用機器では、過酷な環境下での安定稼働が求められるため、耐久性の高いSLCが選ばれる傾向にあります。

MLC:性能とコストのバランスに優れたセル方式

MLC(Multi-Level Cell)は、1つのNANDフラッシュセルに2ビットのデータを記録する方式です。このmlc方式は、SLC(Single-Level Cell)よりも多くのデータを保存できるため、大容量化が可能です。また、SLCと比較して製造コストを抑えられるというメリットがあります。

性能とコストのバランスが良く、安定したパフォーマンスを提供することから、一般的なビジネス用途や多くのSSD製品に採用されています。 MLCの書き換え可能回数は約8,000回から10,000回程度とされており、SLCの9万〜10万回には及ばないものの、TLC(Triple-Level Cell)やQLC(Quad-Level Cell)と比較すると高い耐久性を持っています。

エンタープライズ向けには、通常のMLCよりも耐久性を高めたeMLC(Enterprise MLC)も存在し、より信頼性が求められる環境で利用されています。 MLCは、信頼性とコスト効率のどちらも重視したい場合に適したNANDフラッシュメモリと言えるでしょう。

TLC:コストを抑え大容量化を実現したセル方式

TLC(Triple Level Cell)は、1つのセルに3ビットのデータを保存するNANDフラッシュメモリの方式です。MLCよりもさらに多くのデータを格納できるため、大容量化と製造コストの低減を実現できる点が大きな特長です。このため、一般消費者向けのSSD製品やUSBメモリ、SDカードなど、幅広いストレージデバイスで広く採用されています。例えば、SATA接続のSSDの多くはTLCを採用しており、高性能でありながら手頃な価格を実現しています。

TLCの書き換え可能回数は約3,000回から5,000回程度とされており、SLCやMLCと比較すると耐久性は劣ります。しかし、ウェアレベリング技術やエラー訂正技術の進化により、実際の製品寿命は十分に確保されています。例えば、一般的な使用状況であれば、数年間は問題なく利用できる耐久性があると言えるでしょう。

また、一部のTLC SSDでは、SLCキャッシュ技術を搭載することで、一時的にSLCのように高速な書き込みを可能にし、ユーザー体験の向上を図っています。この技術は、少量のデータ書き込み時にSLCとして動作させることで、TLC本来の書き込み速度の遅さを補うものです。

このように、TLCはコストパフォーマンスに優れ、大容量のストレージを手軽に入手できることから、現代のデジタルデバイスにおいて主流のNANDフラッシュメモリとして広く普及しています。

QLC:最も安価で大容量だが書き換え耐性は低いセル方式

QLC(Quad-Level Cell)は、1つのセルに4ビットのデータを記録するNANDフラッシュメモリです。TLCに比べて、同じ製造コストで記憶容量を約1.3倍に増やせるため、大容量化と低コスト化を実現する点で優れています。この特性から、QLCはHDDの代替品として、ニアラインやクライアント環境での利用が期待されています。特に、Intelの660pシリーズSSDなどがQLC方式を採用しており、大容量ながらも手頃な価格で提供されています。

しかし、QLCには書き換え耐性が低いというデメリットがあります。SLCやMLC、TLCと比較して書き換え可能な回数が大幅に少なく、SLCの10万回に対してQLCは平均1,000回程度しかプログラム・消去(P/E)サイクルをサポートしません。これは、データ書き込みが頻繁に発生する用途には向いていません。例えば、オペレーティングシステムや、書き換えが多いデータベースのような用途では、セルの劣化が進みやすく、故障のリスクが高まる可能性があります。

そのため、QLCは主に読み出しが中心で、書き込みが少ない用途に適しています。例えば、大容量のデータを保存するストレージや、アーカイブ用途などが挙げられます。書き換え回数の少なさを補うため、一部のQLC SSDではSLCキャッシュ技術を採用し、書き込み性能の向上や寿命の延長を図っています。このように、QLCはコストと容量を重視する一方で、書き換え耐性の低さを理解し、用途に応じて適切に選択することが重要です。

現在主流の3D NANDフラッシュとは?

現在主流となっている3D NANDフラッシュは、従来の2D NANDフラッシュが抱えていた大容量化の課題を解決するために開発されました。従来の2D NANDが記憶セルを平面に配置していたのに対し、3D NANDは記憶セルを立体的に積層することで、より大容量のデータを記録できるように進化しています。この技術により、SSDなどのストレージ製品は、さらに大容量かつ低コストで提供されるようになりました。積層数を増やすことで容量を増やせるため、今後のさらなる進化が期待されています。

知っておきたいNANDフラッシュのメリット

NANDフラッシュは、データの高速な書き込みや読み出しが可能で、従来のHDDと比較して非常に高速に動作します。特にシーケンシャルアクセスに優れており、大容量データの転送においてその真価を発揮します。

また、NANDフラッシュは機械的な可動部品がないため、外部からの衝撃に強く、小型化しやすいというメリットがあります。これにより、スマートフォンやタブレット、SSDなど、幅広いデジタル機器に搭載されています。

さらに、集積化が容易で大容量化しやすい特性を持ち、製造コストを抑えられる点も大きなメリットです。特に3D NANDの登場により、大容量化と低価格化がさらに進んでいます。

データの高速な書き込みや読み出しが可能

NANDフラッシュメモリは、従来のHDDと比較して、データの書き込みや読み出しを非常に高速に行える点が大きなメリットです。HDDはプラッタと呼ばれる円盤が回転し、磁気ヘッドが物理的に移動してデータを読み書きするため、物理的な制約からアクセス速度に限界があります。一方、NANDフラッシュメモリは半導体を利用しており、電気信号によって瞬時にデータにアクセスできるため、圧倒的な速度差が生まれます。例えば、一般的にSSDに搭載されているNANDフラッシュメモリのシーケンシャル読み出し速度は、HDDが毎秒100MBから200MB程度であるのに対し、毎秒500MBを超える製品も多く、さらに高性能なNVMe SSDでは毎秒数GBにも達する場合があります。この高速性により、OSの起動時間の短縮、アプリケーションの高速化、大容量ファイルの転送時間の削減など、PCやスマートフォンの全体的なパフォーマンス向上に大きく貢献しています。特に、大量のデータを頻繁に扱うビジネスシーンや、オンラインゲームなどで高速な読み込みが求められる場面で、その真価を発揮します。

衝撃に強く小型化しやすい

NANDフラッシュメモリは、機械的な駆動部分が存在しないため、HDDのような可動部品を持つストレージと比較して、落下や衝撃によるデータ破損のリスクを大幅に低減できます。例えば、ノートパソコンの持ち運び中に発生する不意の衝撃や振動にも強く、安心してデータを扱えます。さらに、HDDがデータの読み書きにプラッタの回転とヘッドの移動を必要とするのに対し、NANDフラッシュメモリは電気信号のみでデータのやり取りを行うため、より高速なアクセス速度を実現しています。これにより、OSの起動時間短縮やアプリケーションの高速化、大容量ファイルの転送時間の短縮など、ユーザーエクスペリエンスが向上します。また、NANDフラッシュメモリは小型化が容易であるという特性も持ち合わせており、スマートフォンやタブレット、薄型ノートパソコンなどのモバイルデバイスに不可欠な存在となっています。例えば、HDDでは実現が難しい薄さや軽さのデバイスでも、NANDフラッシュメモリを採用することで、より高い性能と携帯性を両立できるようになります。これらの特性から、NANDフラッシュメモリは現代のデジタルデバイスにおいて、非常に重要な役割を担っているのです。

大容量化が容易で製造コストが低い

NANDフラッシュメモリは、その構造から大容量化が容易で、製造コストを低く抑えられる点が大きなメリットです。1本のビット線に多数のメモリセルを接続できるNANDフラッシュは、1個当たりのメモリセルが占める面積がNORフラッシュよりも小さいため、ビットあたりの価格を低減できます。

また、製造プロセスの微細化に加え、メモリセルに複数のデータを記録する多値化技術や、メモリセルを垂直方向に積み重ねる3D NAND技術の進化により、飛躍的な大容量化を実現してきました。これにより、NANDフラッシュはハードディスクドライブ(HDD)と比較しても、ビットあたりの価格競争力が高まり、SSDやUSBメモリ、SDカードといった様々な記憶媒体に広く採用されています。

特に3D NANDは、同じ面積でより多くのデータを格納でき、製造コストを抑えることが可能です。今後も技術革新が進むことで、NANDフラッシュメモリの価格はさらに下がる可能性があります。

NANDフラッシュを利用する上での注意点

NANDフラッシュは、セルごとに書き換え回数の上限が設けられており、書き換えを繰り返すことで劣化が進み、やがては記録できなくなるという特性があります。そのため、利用する際は書き換え回数に注意が必要です。また、データの書き込みや読み出しを行う際にエラーが発生することもあるため、重要なデータは定期的にバックアップを取ることを推奨します。さらに、データを完全に消去するには専用のツールが必要となる場合があるため、廃棄する際は情報漏洩にも配慮することが大切です。

セルごとに書き換え回数の上限が存在する

NANDフラッシュメモリには、データを書き換えられる回数に上限が設けられており、この上限はNANDフラッシュメモリのセルタイプによって異なります。例えば、1つのセルに1ビットを記録するSLC(シングルレベルセル)は書き換え回数の目安が10万回であるのに対し、2ビットを記録するMLC(マルチレベルセル)は約1万回、3ビットを記録するTLC(トリプルレベルセル)は約3,000回、4ビットを記録するQLC(クアッドレベルセル)は300〜1,000回とされています。保存できるデータ量が増えるほど書き換え回数は減少する傾向にあります。

書き換え回数の上限が存在する理由は、NANDフラッシュメモリがデータを記録する際に、セル内部のトンネル酸化膜に電子を出し入れすることで劣化が進むためです。この劣化が進むと、電子を正確に保持できなくなり、データが正しく読み書きできなくなります。

SSDなどのNANDフラッシュメモリ製品では、この書き換え回数の上限を考慮し、ウェアレベリングと呼ばれる技術を用いて特定のセルに書き込みが集中しないよう制御することで、製品寿命を延ばしています。また、SSDの寿命を延ばすためには、不要なデータの削除や空き容量の確保、仮想メモリの使用を控えるなどの対策も有効です。

NANDフラッシュが活用されている身近な製品例

NANDフラッシュメモリは、私たちの日常生活に欠かせない様々な製品に活用されています。代表的な用途として、パソコンのストレージとして普及しているSSDが挙げられます。また、写真や動画の保存に利用されるSDカードやmicroSDカード、手軽にデータを持ち運べるUSBメモリにもNANDフラッシュが使われています。スマートフォンやデジタルカメラの内部ストレージとしてもNANDフラッシュが搭載されており、高画質な画像や動画を大量に保存するニーズに応えています。これらの製品は、NANDフラッシュの高速なデータ処理能力と大容量化のメリットを最大限に活かしていると言えるでしょう。

SSD(ソリッドステートドライブ)

SSD(ソリッドステートドライブ)は、NANDフラッシュメモリを記録媒体として使用する次世代のストレージデバイスです。従来のHDDとは異なり、SSDは物理的な駆動部品を持たないため、データの読み書きが高速で、衝撃に強く、動作音も静かという特長があります。また、HDDに比べて小型で軽量なため、ノートパソコンや薄型デバイスにも搭載しやすいのがメリットです。

SSDは主に、NAND型フラッシュメモリ、コントローラ、DRAM(キャッシュメモリ)の3つの部品で構成されています。NAND型フラッシュメモリが実際にデータを保存する部分であり、電源を切ってもデータが消えない不揮発性メモリです。コントローラはNANDフラッシュメモリへのデータ読み書きを制御し、DRAMはデータ処理を高速化するための一時的な保存場所として機能します。

NANDフラッシュメモリには、データを保存するセルの種類によってSLC、MLC、TLC、QLCといった種類があり、それぞれ特性が異なります。例えば、SLCは高速で長寿命ですが高価であり、QLCは安価で大容量化が容易ですが書き換え耐性が低いといった違いがあります。近年では、メモリセルを垂直方向に積み重ねて大容量化とコスト削減を実現した3D NANDフラッシュメモリが主流となっており、多くのSSD製品で採用されています。

USBメモリ

USBメモリは、NANDフラッシュメモリを搭載した小型の外部記憶装置です。コンパクトで持ち運びがしやすいため、ビジネスシーンでのデータ共有や、個人での写真や動画のバックアップなど、幅広い用途で活用されています。例えば、プレゼンテーション資料を別のPCで開いたり、旅行先で撮影した大量の写真を一時的に保存したりする際に便利です。また、データの読み書き速度も向上しており、大容量のデータでもストレスなく扱える製品が増えています。昨今では、USB 3.0やUSB 3.1といった高速なインターフェースに対応した製品が主流で、以前よりもさらに高速なデータ転送が可能になっています。USBメモリは、その手軽さと利便性から、NANDフラッシュメモリの代表的な活用例として、多くの人に利用されています。

SDカード・microSDカード

SDカードやmicroSDカードは、デジタルカメラやスマートフォン、ドローンなどのポータブルデバイスで広く利用されているNANDフラッシュメモリを搭載した小型の記録メディアです。これらのカードは、写真や動画、音楽、ドキュメントなど、さまざまなデジタルデータを保存するのに使われます。特に高解像度の写真や4K動画の撮影が一般的になった現代において、大容量かつ高速なデータ転送が可能なSDカードやmicroSDカードは不可欠な存在です。例えば、デジタルカメラでRAW形式の写真を連続撮影する際や、高ビットレートの動画を長時間記録する際には、書き込み速度の速いSDカードが必要となります。また、スマートフォンの内部ストレージが不足した場合に、microSDカードを挿入して容量を拡張することも可能です。NANDフラッシュメモリが持つ「小型化しやすい」という特性は、SDカードやmicroSDカードが手のひらに収まるほどのサイズでありながら、数百GBから数TBもの大容量を実現している大きな理由です。さらに、可動部品がないため、外部からの衝撃にも強く、持ち運びの多いポータブルデバイスでの利用に適しています。カードの選び方としては、用途に応じて「UHSスピードクラス」や「ビデオスピードクラス」といった規格を確認し、必要な書き込み速度や読み出し速度を満たすものを選ぶことが重要です。

スマートフォンの内部ストレージ

スマートフォンの内部ストレージにもNANDフラッシュは広く採用されています。スマートフォンに搭載されているストレージは、アプリのデータ、写真、動画など、さまざまなデジタル情報を保存する役割を担っています。これにより、利用者は電源を切っても大切なデータが失われる心配なく、安心してスマートフォンを使うことができます。スマートフォンのストレージ容量は年々増加しており、NANDフラッシュ技術の進化がこの大容量化を支えていると言えるでしょう。例えば、最新のiPhoneモデルでは最大1TBのストレージが提供されており、これは高画質な写真や4K動画を大量に保存できることを意味します。この大容量化は、NANDフラッシュが持つ「低コストで大容量化が容易」という特性によって実現されています。スマートフォンは常に持ち歩かれ、落下の危険性もあるため、物理的な衝撃に強いNANDフラッシュの特性は、スマートフォンにとって非常に重要なメリットとなります。

まとめ

NANDフラッシュは、電源を切ってもデータが保持される不揮発性メモリであり、SSDやUSBメモリ、SDカードなど、身近な製品に幅広く活用されています。高速な書き込みと読み出しが可能で、衝撃に強く小型化しやすいといったメリットがあります。NANDフラッシュのメーカーとしては、東芝から分社化したキオクシアが、高い市場シェアを誇る主要メーカーの一つとして知られています。しかし、NANDフラッシュには書き換え回数の上限があるため、利用する際は注意が必要です。種類によって性能やコスト、書き換え耐性が異なるため、用途に合ったNANDフラッシュを選ぶことが重要です。

用語まとめ

不揮発性メモリ(Non-Volatile Memory)
 電源を切ってもデータが消えないメモリのこと。HDDやSSDなどのストレージに使われる。対して、RAMのように電源が切れると消えるメモリは「揮発性メモリ」。

NANDフラッシュメモリ
 1987年に東芝(現キオクシア)が発明した不揮発性メモリ。データを「セル」に電荷として保存する仕組みで、SSDやUSBメモリ、スマホのストレージなどに広く使われている。

NORフラッシュメモリ
 NANDと同じく不揮発性メモリの一種だが、データの信頼性やランダムアクセス性能に優れる。主に組み込みシステムやファームウェア保存に利用される。

フローティングゲート
 NANDフラッシュのセル内にある絶縁構造の領域。電子を閉じ込めることで「1」や「0」を記録し、データを保持する。

ページ書き込み
 NANDフラッシュで採用される、一度に複数のデータブロックをまとめて書き込む方式。高速なデータ転送を実現する。

セル(メモリセル)
 NANDフラッシュメモリの最小単位で、データを格納する構造。1つのセルに何ビットの情報を保存するかで性能が変わる。

SLC(Single Level Cell)
 1セルに1ビットを記録する方式。最も高速で長寿命だが高コスト。産業機器やサーバーなど高信頼性が求められる用途に使用。

MLC(Multi Level Cell)
 1セルに2ビットを記録する方式。性能とコストのバランスに優れ、一般的なSSDや業務用ストレージに広く採用。

TLC(Triple Level Cell)
 1セルに3ビットを記録。MLCより安価で大容量化しやすいが、書き換え耐性はやや低い。家庭用SSDやスマホで主流。

QLC(Quad Level Cell)
 1セルに4ビットを記録。最も大容量・低コストだが書き換え耐性が低い。主にデータ保存用や読み出し中心の用途に適している。

3D NAND
 セルを平面ではなく垂直方向に積み重ねた構造。従来の2D NANDに比べて大容量化・低コスト化・高耐久性を実現。

SSD(Solid State Drive)
 NANDフラッシュを使ったストレージ装置。高速・静音・省電力で、HDDに代わり主流になっている。

HDD(Hard Disk Drive)
 磁気ディスクを使ってデータを保存する従来型ストレージ。大容量・安価だが、可動部品があり衝撃に弱い。

ウェアレベリング(Wear Leveling)
 NANDフラッシュの書き換え回数を均等化する技術。特定のセルだけが早く劣化するのを防ぎ、寿命を延ばす。

ECC(Error Correction Code)
 データの誤りを検出・修正する仕組み。フラッシュメモリの信頼性を高めるために用いられる。

P/Eサイクル(Program/Erase Cycle)
 書き込みと消去の1セットを指す単位。これが繰り返されるほどセルが劣化する。SLCは約10万回、QLCは数百回程度が目安。

エンタープライズSSD
 高耐久性・高信頼性を重視した企業向けSSD。SLCやeMLCを使用することが多く、サーバー用途などに最適。

eMLC(Enterprise MLC)
 MLCを企業向けに耐久性・信頼性を高めた仕様。一般MLCより寿命が長く、データセンターなどで採用。

NVMe(Non-Volatile Memory Express)
 SSD用の高速インターフェース規格。PCIe接続を利用し、従来のSATA SSDよりも圧倒的に高速。

キオクシア(Kioxia)
 旧・東芝メモリから独立した日本の半導体メーカー。NANDフラッシュの世界的リーディングカンパニー。

シーケンシャルアクセス
 連続したデータを一括で読み書きする方式。動画や大容量ファイルの転送時に有利。

ランダムアクセス
 任意のアドレスのデータに直接アクセスできる方式。プログラムやOSの動作に必要。

西進商事コラム編集部

西進商事コラム編集部です。専門商社かつメーカーとしての長い歴史を持ち、精密装置やレーザー加工の最前線を発信。分析標準物質の活用も含め、さまざまなコラム発信をします。