2025.10.03

ファウンドリとは?半導体業界での役割やOSATとの違い、メリットを解説

ファウンドリとは?半導体業界での役割やOSATとの違い、メリットを解説

ファウンドリとは、半導体業界において、半導体チップの製造を専門に請け負うfoundry企業を意味します。自社で半導体の設計や開発は行わず、設計を専門とするファブレス企業などからの依頼を受けて、その設計データに基づき半導体を製造することが主な役割です。このビジネスモデルのメリットは、ファウンドリー企業が製造に特化することで専門性が高まり、高品質で高性能な半導体製造が可能になる点ですが本記事では、メリットを含めファウンドリについて詳しく解説していきます。

ファウンドリとは半導体の製造を専門に請け負う企業のこと

ファウンドリとは、半導体の受託生産を専門に行う企業を指します。自社で半導体工場を所有し、他社からの依頼を受けて半導体の製造サービスを提供しています。一般的に、ファウンドリは顧客企業から提供された設計データに基づいて半導体を製造しますが、特定のケースでは顧客企業のチップ設計により深く関与することもあります。例えば、TSMCは「Open Innovation Platform(OIP)」のようなエコシステムを整備し、顧客企業との円滑な協業環境を提供しています。ファウンドリは、前工程であるウェーハ製造からテストまでを担い、半導体製造のOEM会社として機能しています。このビジネスモデルは、半導体メーカーが巨額な設備投資をせずに生産能力を確保できるため、半導体業界において重要な役割を担っています。

ファウンドリと他の半導体関連企業との違い

ファウンドリは、半導体業界の中でも製造工程を専門に担う企業です。半導体メーカーには、ファウンドリのほかにファブレスやIDM、OSATといった異なるビジネスモデルを持つ企業が存在します。
その違いを見ていきましょう。

設計のみを行う「ファブレス」との関係性

ファウンドリとファブレス企業は、現代の半導体産業において密接な関係にあります。ファブレスは、自社で製造工場を持たずに半導体の設計と開発に特化する企業形態です。例えば、QualcommやNVIDIA、Appleなどが代表的なファブレス企業として挙げられます。これらの企業は、革新的な半導体チップの設計に注力し、その設計データをファウンドリに提供することで製品を具現化しています。これにより、ファブレス企業は多額の設備投資を必要とせず、市場の変化に迅速に対応できるというメリットを享受しています。

一方、ファウンドリはファブレスから依頼された設計に基づいて、実際に半導体を製造する役割を担っています。台湾積体電路製造(TSMC)は、ファウンドリ業界の最大手として知られており、最先端の製造技術を駆使して多くのファブレス企業の製品を生産しています。このように、ファブレスとファウンドリは互いに補完し合う関係にあり、それぞれの専門性を活かすことで半導体産業全体の発展を支えているのです。

設計から製造まで一貫して行う「IDM」との違い

IDM(Integrated Device Manufacturer)は、半導体の設計、製造、そして販売までを一貫して自社で行うメーカーです。これに対し、ファウンドリは半導体の製造を専門に請け負う企業であるという点で明確な違いがあります。IDMモデルでは、製品の企画から最終製品が消費者の手に届くまで、すべての工程を自社で管理するため、品質管理や技術の統一性を保ちやすいというメリットがあります。例えば、IntelやSamsungといったメーカーは、かつてIDMモデルを主体としていました。

しかし、半導体製造技術の高度化と設備投資額の増大により、すべての工程を自社で賄うことの難しさが増してきました。特に、最先端の製造ラインを構築するには莫大な費用がかかるため、多くのIDMメーカーがファウンドリに製造の一部を委託する動きも見られます。これにより、IDMメーカーは設計や開発といった特定の領域に経営資源を集中させ、競争力を維持する戦略を取るケースが増えています。このように、IDMとファウンドリは、半導体メーカーとしてのビジネスモデルにおいて、互いに異なる役割を担っているのです。

後工程を専門とする「OSAT」との役割分担

ファウンドリとOSATは、半導体製造プロセスにおいてそれぞれ異なる工程を専門とする企業であり、密接な連携によって効率的な半導体生産を実現しています。ファウンドリが半導体チップの設計データに基づいて、前工程であるウェーハ製造から回路形成までを担うのに対し、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)は、その後の後工程を専門に担当しています。具体的には、完成したウェーハから個々のチップを切り出し、パッケージングと呼ばれる保護・接続作業を行い、最終的な機能や品質を検査する工程をOSATが手掛けています。

この役割分担により、ファウンドリは微細加工技術などの前工程に特化して技術革新を進め、OSATは効率的な組み立てや高度な検査技術を追求することが可能になります。例えば、スマートフォン向け高性能チップの製造では、ファウンドリが極めて微細な回路を形成した後、OSATがそのチップを耐衝撃性や放熱性に優れたパッケージに封入し、さらに厳格な検査を実施することで、高品質な製品が市場に供給されています。このように、両者が協力することで、複雑な半導体製造プロセス全体の効率化と高品質化が図られています。

なぜファウンドリというビジネスモデルが誕生したのか

半導体の製造には非常に専門的な知識と莫大な設備投資が必要であり、それがファウンドリ誕生の背景にあります。特に、半導体製造プロセスの微細化が進むにつれて、設備投資額は加速度的に増加し、一般的な企業が自社で製造工場を持つことが困難になりました。この状況に対し、設計と製造の工程を分離することで、ファブレス企業は多額の初期投資を回避し、設計や開発といったコア業務に集中することが可能になりました。これにより、ロジック半導体やメモリなど、さまざまな種類の半導体チップを効率的に製造できるシステムが確立され、半導体産業全体の発展を支えることとなったのが、ファウンドリというビジネスモデルの誕生例と言えます。

ファブレス企業がファウンドリを活用する3つのメリット

ファブレス企業がファウンドリを活用する最大のメリットは、「巨額な設備投資なしで半導体製造が可能になる」「コア業務に集中できる」「最先端の製造プロセスで高性能な製品を作れる」などの点にあります。

巨額な設備投資なしで半導体製造が可能になる

半導体製造には、工場建設や高性能な製造装置の導入に莫大な費用がかかります。例えば、最先端の半導体工場を建設するには数兆円規模の投資が必要とされ、この費用は年々増加傾向にあります。ファウンドリを活用することで、ファブレス企業は自社でこれらの巨額な設備投資を行う必要がなくなります。これにより、投資リスクを大幅に軽減し、新規参入のハードルを下げることも可能です。例えば、スタートアップ企業が革新的な半導体設計を持っていても、自社で製造ラインを構築することは現実的ではありません。しかし、ファウンドリに製造を委託することで、設計に集中し、製品化を実現できるのです。このビジネスモデルは、半導体産業全体のイノベーションを促進し、多様な企業が競争に参加できる環境を作り出しています。

製品の設計や開発といったコア業務に集中できる

ファウンドリに製造を委託することで、ファブレス企業は自社の強みである半導体の設計や開発といったコア業務に経営資源を集中できます。これは、限られたリソースの中で競争力を最大化するために非常に重要な戦略です。例えば、AppleはiPhoneやiPadに搭載されるAシリーズチップの設計に注力し、製造は主にTSMCに委託しています。これにより、Appleは革新的なチップの性能向上と新機能の開発に集中し、製品全体の差別化を図ることが可能になります。

また、NVIDIAもGPUの設計・開発に特化し、ファウンドリを活用することで、ゲーミングやAIといった分野で高性能な製品を提供し続けています。自社で製造ラインを保有しないことで、工場運営にかかる時間やコスト、そして人材を削減し、それらを設計や研究開発に投入できるため、より高度な技術革新と製品開発が期待できるでしょう。結果として、市場投入までの期間短縮にも繋がり、競争優位性を確立する上で不可欠な要素となります。

最先端の製造プロセスを利用して高性能な製品を作れる

ファウンドリを利用する最大のメリットの一つは、ファブレス企業が自社では持ち得ない最先端の製造プロセスを活用し、高性能な製品を製造できる点です。半導体製造には、微細化技術をはじめとする非常に高度な技術と、それを実現するための巨額な設備投資が不可欠です。例えば、回路線幅が数ナノメートル単位の最先端プロセスでは、EUV(極端紫外線)露光装置のような特殊な装置が必要となり、その導入には莫大な費用がかかります。ファウンドリは、これらの最新技術や設備を大規模に導入し、多くのファブレス企業からの製造を受託することで、効率的な運用を可能にしています。

これにより、nvidiaのような高性能なGPUを設計するファブレス企業は、自社で高額な製造設備を保有せずとも、ファウンドリの最先端プロセスを利用して、世界をリードする高性能チップを生産することが可能になります。結果として、ファブレス企業は設計と開発に専念でき、市場投入までの時間を短縮し、競争力の高い製品を迅速に提供できるのです。

ファウンドリ企業が直面する経営上の課題

ファウンドリ企業は、半導体市場において重要な役割を担っていますが、同時に複数の経営課題にも直面しています。経営上の2つの課題を見てみましょう

新技術に対応するための継続的な設備投資が必要

半導体産業では技術革新のスピードが非常に速く、微細化や3D積層といった最先端の製造プロセスを導入するためには、莫大な設備投資が継続的に必要となります。例えば、一つの最新鋭の半導体製造ラインを建設するには数兆円規模の投資が必要とされることも珍しくありません。ファウンドリ企業は、常に最先端技術に対応できるような製造設備を導入し続ける義務があり、これに遅れると競争力を失ってしまいます。

近年の事例として、かつて米国のIntelがファウンドリ事業への本格参入を表明し、巨額の設備投資計画を発表しました。これは、ファウンドリ事業が技術革新と設備投資の競争であることを示唆するものでしたが、後にIntelは2025年7月にファウンドリ投資計画を撤回し、大規模な構造調整計画を発表しています。これにより、Intelが事実上ファウンドリ事業から撤退し、人工知能(AI)半導体分野に注力する可能性も指摘されています。また、設備投資額も2024年12月期に200億ドルから180億ドルへ、2025年12月期には168億ドルまで引き下げられました。この事例は、半導体業界における投資戦略の難しさと、市場の変化への対応の重要性を浮き彫りにしています。

技術進化のサイクルが短縮される中で、ファウンドリ企業は継続的な設備投資によって、次世代の半導体製造技術に対応し、顧客であるファブレス企業の要求に応え続けることが求められます。この投資が滞れば、市場シェアの低下や顧客の流出につながりかねません。

半導体市場の需要変動による影響を受けやすい

ファウンドリは、半導体市場の需要変動に大きく左右されるビジネスモデルです。スマートフォンやデータセンター、自動車など、幅広い分野で半導体の需要は高まっていますが、景気変動や世界情勢によって需要が急減するリスクも存在します。需要が減少すると、ファウンドリは生産能力を十分に活用できなくなり、収益の悪化に直結します。

また、特定の顧客、例えば大手ファブレス企業への依存度が高い場合、その顧客の生産計画変更がファウンドリの業績に与える影響は非常に大きいです。例えば、主要な取引先であるtiなど、一部の主要顧客からの受注が減少すると、ファウンドリの経営に深刻な打撃を与える可能性があります。このようなリスクを回避するためには、複数の顧客と取引を行うことや、多様な製品分野に対応できる柔軟な生産体制を構築することが重要です。

世界の主要ファウンドリ企業とシェアランキング

現在の世界のファウンドリ業界は、台湾のtsmcやumc、韓国のサムスンといった大手企業が市場の大部分を占めるランキングとなっています。特にtsmcは高い技術力と生産能力で世界トップシェアを誇り、半導体メーカーからの受託製造を多数請け負っています。日本でもラピダスが次世代半導体の国産化を目指しており、今後の動向が注目されています。中国企業も台頭しつつあり、ファウンドリ市場は今後も競争が激化し、各企業の売上やシェアが変動する可能性があります。これらの企業一覧から見ても、半導体製造におけるファウンドリの重要性は高まる一方です。

まとめ

ファウンドリは、半導体の受託製造を専門とする企業であり、設計に特化するファブレス企業をサポートし、製造から販売までを行うIDMとは対照的です。また、後工程を専門とするOSATと連携し、現代の半導体産業において効率的な生産体制を確立しています。このような分業体制は、各企業が専門分野に集中し、技術革新を加速させる上で不可欠な要素です。ファウンドリの登場により、半導体業界は多様なビジネスモデルが共存し、より柔軟な供給体制を構築できるようになりました。今後も技術の進化とともに、ファウンドリの重要性はますます高まっていくことが予想されます。

西進商事コラム編集部

西進商事コラム編集部です。専門商社かつメーカーとしての長い歴史を持ち、精密装置やレーザー加工の最前線を発信。分析標準物質の活用も含め、さまざまなコラム発信をします。

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